先に結論 §
「結局、ヴァンシップもヴェスパも何が何やら分からないので、あえてキットを買って分かるために作ってみた」
「この場合の『分かる』とは?」
「デザイナーの意図を理解するという意味ではなく、自己満足として納得できることだ」
「情けない目標だね」
「そう言うな。他人の頭の中を訳知り顔で説明なんかできるわけないだろう。むしろ、説明できたらおかしい」
「ひ~」
「ちなみに、飛ばない理由と題して競作をしている人たちとは決定的に違うことが分かった。あれは乗れない」
「なぜ? 飛ばないから?」
「いや。少なくとも彼らはヴァンシップというものを分かっていて、何かしらそれと通じる別の造形を作ろうとしている」
「ヴァンシップを分かっていない君とは立つ地平が違うわけだね」
「そうそう。ヴァンシップが分からないから作る。だから、あくまでキットのヴァンシップの形状を忠実に作る。知りたいのはヴァンシップだからだ。しかし、彼らは違うものを作る。目的があまりにも違いすぎる」
「壊れたヴァンシップ作りのは挑戦しなかったの?」
「それはまた別の問題があるのだ」
「何が問題?」
「壊れたヴァンシップを作るには、ヴァンシップの立場や素材、内部機構を把握している必要がある。平面の1イラスト1枚では描かれていない部分がいくらでも出てくるが、それらは自分で考えて補完しなければならない。しかし、分かっていなければ補完できない」
「分かるためにヴァンシップを作る君には無理な注文ということだね」
「そうだ」
「ヴェスパも同じ?」
「そうだ。分からないなら作る」
「では最終的な結論は?」
「ヴェスパは分かった。もちろん、自分で納得したという意味で分かった。ヴェスパなら、どう作れば良いか自分なりに正しい方向性を示せる」
「オフィシャルな正しさではないわけだね」
「そう。個人的な正しさ」
「ではヴァンシップは?」
「実はまだ分からない」
「なぜ?」
「それが分かったら、分かることができるさ」
「ぎゃふん」
ヴァンシップ §
「個別の話を聞くよ。君のヴァンシップはどうなのさ」
「いろいろ不満が残った」
「最初から巨人の惑星とすることを決めて作ったのだろう?」
「そうだ。でも、それも失敗した」
「えー」
「リアクションがとても少ない。すべった証拠だ」
「すべった理由はなんだい?」
- 人の大きさのコントラストを出すために1/72のパイロットを乗せたが、サイズ比が大きすぎて写真に上手く収まらなかった (結局1/48の方が良かった)
- ヴァンシップ付属のフィギュアは、フルフェイスのヘルメットをかぶっている感じで顔が見えなくて、驚いているニュアンスをあまり出せなかった (結局、これもフィギュアの問題)
- 赤で塗ることは、空中戦艦大和艦載機らしくない
- 本当は山ほど色を使っていろいろお化粧しているが、デカールを活かすために色の個性は殺し気味に塗ってしまった。ぱっと見で色的に面白くいない
「どうせ影になるからと言って、明るい黄色で塗った床はどうなったのさ」
「パイロット乗せたらほとんど見えなくなったよ」
「えー。アピールポイントにならないじゃないか」
「でもね。大和艦載機っぽく緑に塗って48フィギュア載せて大和艦載機のデカールを貼ってしまうと、小林さんの作例と同じになってしまう。方向性が同じなら単に技量で負けるから、その路線は取りたくない」
「じゃあ、どうするんだよ」
「答えはまだ無い。何しろ、自分はまだヴァンシップを解釈できていない」
「どんな答えだと予測する?」
「少なくとも全体を赤く塗るような塗り方では無かろう」
ヴェスパ §
「次はヴェスパについて質問するぞ」
「ヴェスパは一応分かった。分かった上で自分のヴェスパには問題があると分かる」
「何が悪いの?」
「パイロットの姿勢。特に後席」
「どうすればいいと思うの?」
「2人とも前傾していた方がいい。その方が高速で前進している感じが出る」
「模型の元になったと思われるイラストでは後席搭乗員は前傾していないけど、それほど不自然ではないよ」
「模型とイラストは表現が違うからだ。イラストをその通り立体にすればそれで良いとは限らない。立体には立体の説得力があるのだ」
「えー」
「ヴェスパの場合、もしかしたら搭乗員の胴体が水平になるぐらい、ピッタリ乗っている方がそれっぽいかもしれない。その場合は1人乗りになるかもしれない」
「ずいぶんキットのムードとは違ってくるよ」
「もちコース。その場合、身体の大部分が見えるから左右のカバーは付けてもいい。色は金属剥き出しっぽいシルバーでもいい」
「スピードのために全てをそぎ落とした感じだね」
最終まとめ §
「いずれにしても、このままでは終われない感があるな。感があっても何かができるとは限らないが」
「もう1個キットを買ってリベンジしないの?」
「ジェダイはリベンジしないのだ」
「じゃあリターンは?」
「着手して棚上げになったキットが他にも多いのだ。それらの相手をせねばならん。それにそのうちにポルメリア級(高速空母)も出てしまうのだ」
オマケ §
「ついでに、うさだひかるについても反省会やれよ」
「うむ。あれも反省の塊だ」
「何が反省点?」
「ともかく頭からの上の重量がすさまじく、普通の方法論では歯が立たなかった。首から下は比較的あっさりできたが、その先が地獄だった」
「結論は?」
「倒壊させない補強工作だけで力尽きるキットもある。色とか形を云々するゆとりなどなく、ただ倒壊しないというだけで終わってしまうキットもある」
「なんて結論だ」
「可愛いとか可愛くないとかキャラに似てるとか似てないとか、そんなことは既に問題ではない。ただ重すぎる頭部に対策するだけで終わりだ。キットそのものがでかいから、尚更だ」
「こんなでかいキット、なぜ作ったの?」
「単に昔買ったものが積んであったから。それだけ」
「でかいフィギュアはこれが最後?」
「ふふふ。まだ白鳥あずさというキットが残っているのだ。ただ、こいつはうさだひかるほど極端に頭が重そうではないし、しかもPちゃんを抱いた座りポーズなのでずっとバランスが取りやすい。まだマシだろう」
「白鳥あずさ?」
「ムサシヤのたぶん1/8とたぶん1/6が手元にある。1/8の方はスケート靴の歯のパーツが欠けていて安売りしていたのを確保した。でかいのは1/6の方だな」
「いや、白鳥あずさって何?」
「らんま1/2のキャラ」
「1/2なのか1/6なのか1/8なのかはっきりしてくれよ」
「何かが違うぞ」
「分かった分かった。じゃあ、まだ白鳥あずさを作っていない理由は?」
「予想外のヤマトブームに巻きこまれたから。ヤマト2199が無かったらとっくに作っていた可能性がある」
「それは積んであるキットの処理速度が落ちている、という意味?」
「そうだ。少なくとも1/1000の2199ヤマトを2隻も作ってかなりヤマトはお腹いっぱいだぞ」
「2隻目はまだ未完成だしね」
「そうだ。ヴァンシップとヴェスパを取りあえず完成宣言したところで、問題は何も解決していないのだ」
「五章が公開されたらまた模型作ってる時間無くなるよ」
「後生だから勘弁してくれ」
「お。最後もダジャレで締めたね」