「良いニュースと悪いニュース。どちらから聴きたい?」
「良いニュースから」
「何となく棚に置いたヴァンシップ模型完成品がかっこいい」
「それは良かったね。じゃあ、悪いニュースって?」
「そのかっこよさは自分の塗りで産み出されたものではない。それだけの計算をして塗ったわけでは無い。元キット、元デザインの良さの勝利」
「敗北宣言ということか」
「まあな」
ヴァンシップのデザイン論 §
「徐々に分かってきたけどさ」
「なんだよ」
「ヴァンシップは破綻する寸前の凄いぎりぎりのバランスで作られている。そこが魅力でもあるが、なまじ変な改造をするとデザインが破綻する」
「どこが問題なの?」
「エンジンが巨大すぎ、コクピットが後に寄りすぎなんだ。バランスを考えれば、もっとエンジンを小さくしてコクピットを前に持っていく方が良いのだが、それをやっちゃ面白くない。そもそも、このヴァンシップを作る意味が無い」
「意地だね」
「面白がっていると言ってくれたまえ」
「それで何が面白いのだい?」
「あのね。ヴァンシップでキットには無いエンジンを作っているケースが意外に多いの。その理由が分かった」
「なに?」
「エンジンの中身があると、コクピットが後ろにあることに絵的な説得力が生じるのだ」
「中身が詰まっているから乗れる場所が後にずれるわけだね」
「更に言えば、ヴァンシップは飛行機では無く自動車のイメージに近い」
「自動車っぽくないよ」
「ドラッグマシンと思うなら、怪物エンジンの後にちょこんとコクピット、という構造でも不思議はない。スパッツが付いた飛行機の車輪みたいなのが付いているし、空を飛ぶから飛行機的な解釈が先行しがちなのだが、そこはフェイク。実際は大馬力で加速してスピードをぶっちぎるタイプのマシン。器用に飛び回って空戦をするようなタイプではない。本質的には怪物レースマシン」
「じゃあどうしたらいいと思う?」
「飛行機的な記号性は弱めて、怪物エンジンを強調すること。飛ぶ理屈はどうせファンタジーなのだ。ならば空飛ぶ自動車で困ることは何も無い」
「えー」
「つまり結論は?」
「ゼロセンマシンではない。こいつはゼロヨンマシンだ」
「ダジャレかよ」
リベンジは §
「しかし、今の状況でヴァンシップをもう1つ作るのは難しいな。リベンジはヤマト2号艦の航空ユニット全面作り直しと、高速空母で果たそう」
「その心は?」
「ヤマト2号艦の航空ユニットは完全にゼロから作り直す。その際、プラバン工作がメインになるだろう。形状は完全に思い通りになる。だから難しいとも言えるけどね」
「そうか」
「もう1つは高速空母で1つ実験したい工作がある。たぶん、上手く行けばイメージがかなり変わるがこれが自分の高速空母のイメージだ。ただし本当に可能かどうかはキットを手にするまでは分からない。ちなみに、必要な素材の在庫がある事は確認した。古いからもうダメという可能性もあるけどね」
「それはどんな素材?」
「自分は過去に使っているが、普通のモデラーは使った事が無いかも知れない。模型店には無いかも知れないし、見方を変えればあるかもしれない。そういうもの」
「凄く微妙だね」
「それが俺的造形スピリッツ」