2013年03月21日
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三百字小説『歯科医の魔球』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 魔球投手は卒業後に歯科医になった。

 そして、彼のことは母校では魔球の伝説として語り継がれることになった。

 ある日、昔の仲間が歯科医を訪れた。

 「どうしても負けられない草野球の試合がある。魔球を投げてくれ」

 しかし、歯科医は首を縦に振らなかった。「伝説は伝説のままにしておく方が良い」

 昔の仲間は、あの魔球はトリックではないかと疑った。そこで、強引に魔球を投げざるを得ない状況を作り出した。

 歯科医は魔球を投げた。

 トリックなどどこにもなかった。

 魔球は実在したのだ。

 しかし、歯科医は「ズルがばれてしまったね」と悪魔の本性を見せて笑った。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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