「蒼きウル再始動とか、パトレイバー実写リメイクとか、話題は多い」
「それで?」
「自分としてはウルに期待したい」
「パトじゃなくて?」
「そう」
「なんで?」
「ウルはロボットものじゃないから」
「パトはロボットものだね」
王立宇宙軍 §
「それで王立宇宙軍とは?」
「ウルは一応、王立宇宙軍の続編扱いらしいので」
「一応かよ」
「そこでハタと考えた。なぜ自分はウルに期待するのか」
「ロボ出ないからだろ?」
「もっと深い意味があると気付いた」
「というと?」
「ガイナックス作品は基本的にあまり興味がない。しかし、王立宇宙軍だけちょっと違う」
「それにどんな意味があるの?」
「そこを起点に考えたら、考えが広がったのだ」
作品世代論 §
「アニメ作品は以下の4世代に分類できると気付いた」
- 第0世代 お約束が不在の世界
- 第1世代 お約束が不快な世界
- 第2世代 お約束を諦めて受容する世界(玩具にする世界)
- 第3世代 お約束が主役になる世界
「第0世代とは?」
「お約束が成立するほどの時間が経過していない世代」
「第1世代とは?」
「ビジネス上の安全パイが成立し、それはお約束となった時代。あくまで安全パイなので、理想からはほど遠い」
「第2世代とは?」
「理想からいかに遠くでも、それを受容して面白がるしかない世代。消極的受容」
「第3世代とは?」
「第2世代の振る舞いから、お約束が素晴らしいものだと誤認してそれに閉じこもる世代」
「今は第3世代ってことだね?」
「そう。お約束は本来打破されるものという価値観で一貫しているが、第3世代に限ってはお約束こそが基本中の基本になる」
「じゃあヤマトは?」
「第1世代にあって、お約束の打破を試みた作品。しかし、努力と裏腹に自らがお約束の一種になってしまった作品」
「王立宇宙軍とは?」
「第1.5世代。ゴティックメードも同じ場所に来る。お約束を完全に打破しているわけではないが、お約束への不快感を示して違うところに行こうとしている」
「第2世代の代表作は何?」
「そうだな。銀魂かな。お約束を玩具にしている。避けられないものは玩具にしてしまう」
「第3世代の代表作は?」
「エヴァンゲリオンとか萌えアニメがそうだろう」
ウルに話が戻る §
「ここでウルに話が戻る」
「なぜ?」
「ウルがこけてエヴァンゲリオンが企画として生き残ったらしいからだ」
「どういうこと?」
「おそらく第1世代ないし1.5世代のウルの企画が成立せず、第3世代のエヴァンゲリオンが成立したことは意味深だ」
「なぜ?」
「1990年代の後期は第3世代アニメが大きく伸びてきた時期なのだ。そこでは古めかしい、第1世代ないし1.5世代のアニメなどに資金が集まるわけもない」
「そんなもの?」
「事実として第3世代アニメはこの当時、増える一方」
「でも、ウルは再始動したよ」
「第1世代アニメのヤマトがブームになってしまったからな」
「えー」
「第3世代アニメの賞味期限が切れつつあり、やっぱりお約束だけでは飽きるよなと思った層があり、ヤマトが支持されてしまった。ならば、ブーム終末期のエヴァよりも、よほどウルの方が可能性を残すのではないか。そんなムードが出てきたような気がする」
「気がする?」
「そう。気がするだけ。事実かどうかは一切知らない」
「ぎゃふん」
まとめ §
「まとめてくれよ」
「お約束を打破しようとする作品である限り、それはヤマトと同じ世界に属するものであり、それは期待するに値する」
「お約束を肯定して守ろうとする世界とは違うわけだね」
「ウルの設定も世界観も登場人物も何もかも王立宇宙軍と関係ないとしても、その精神さえ継承されていたら同じ世界に属するだろう」
「では、王立宇宙軍とヤマトの違いとは?」
「ヤマトにある戦艦大和の強力なキャラクター性、夢想的な設定は、単独突破が可能だ。だから先陣を切れる。しかし、王立宇宙軍にはどちらも無い。だから、ある程度の時代の流れができてこないと世に出られない制約を持つ」
「それってどういう意味?」
「ヤマトが引き起こしたアニメブームの混沌期の企画として王立宇宙軍は通ることができたが、エヴァンゲリオンの時代は流れが無かった。だからウルの企画は頓挫せざるを得なかった」
「今再び流れができたってことだね」
オマケ §
「パトレイバーでいちばん印象に残ること。それは、作中の都庁にそっくりの都庁が新宿に建ったこと」
「ロボット関係ねえ!」
「なのでリメイクと聞いても何も感じない」
「既に都庁が建った以上、同じ事はもう1回できないわけだね」
オマケ2 §
「パトレイバーは第何世代?」
「第2世代ないし第3世代」
「第2.5世代?」
「いや。分裂している」
「は?」
「パトレイバーには、お約束を玩具にするスタッフと、お約束を正面から受容するスタッフがいて、軋轢がある」
「それってつまり何?」
「前者の路線で行けば面白くなる可能性はあるが、後者の路線ならつまらなくなる。まあ、他の人は知らないけどな」
「そこまで言い切る?」
「OVAの初期6作は前者の路線。コミックは後者の路線。OVAの初期6作レーザーディスクで買ったが、コミックはつまらんので途中で読むのを打ち切った」
「ひぇ~」
「だからパトレイバーと言うだけでは何も分からないよ」
「ならば前者ならいいわけ?」
「そうでもない」
「なぜ?」
「お約束を玩具にしてまで扱う必要がないことを、平成ヤマトの存在が証明してしまったからだ」
「ぎゃふん」
オマケIII §
「というところで、話がヤマトに戻る」
「なぜ戻るの?」
「実は小林誠さんもウルの飛行機をデザインしていたことが発覚したからだ。ウルのフライトシミュレーターの情報を追いかけると名前が出てくる」
「延々と話を展開して、結局行き着く先は同じかい」
王立オマケ §
「物語という意味では、単に飛行機で空を飛んだり、ロケットを打ち上げたりするだけで成立する」
「うん」
「でも、お約束の世界では成立しない。お約束の世界では、モビルスーツが既に宇宙を飛び回っていたのだ。今さら宇宙に行くだけの話で何が面白いのだ、と明確に言ったオタクは王立宇宙軍の頃から実際にいた。彼らのお約束世界とは相容れないのだ」
「じゃあ、君の評価は?」
「王立宇宙軍、十分に面白かったよ。欠点や弱点はあるといえばある。しかし、本質的には些細な問題だろう」
オマケ戦隊オマケンジャー §
「戦隊ものはどうなんだよ。お約束の塊だろう?」
「そうだな」
「じゃあ評価しない?」
「あそこまでいくと、逆にお約束を守りつつ新味を出すための小さな努力の積み重ねが光る」
「お約束が遵守されていないわけ?」
「そうじゃない。お約束は守るが、+αの工夫を忘れないわけだ」
「キョウリュウジャーならどんな工夫?」
「仲間に子持ちの親爺ギャグ戦士とか」
「ひぇ~」
蒼きオマケ §
「蒼きウルは紅の豚へのアンサーだという人もいて、今やってもしょうがないというが、宮崎駿はまた飛行機ものの映画を作るわけだから、それと競ってもいいじゃないか。むしろ、競い合うライバルがいてこそ、両者共に注目を浴びる余地が大きくなるだろう」
「ははは」
「更に言えば、ウルはエヴァに勝たねばならん。エヴァに勝ってアレを乗り越えないと先に進めない、という部分はあるのだろう。たぶん」
「まとめるどどうなんだ?」
- ウルはヤマト遺跡のゲートで加速して出てきた
- ウルはエヴァに勝たねばならない
- ウルのライバルは宮崎駿だ
「盛りだくさんだね」
「それだけ背負うものが多いのだろう」
「それでいいの?」
「今は、背負ったものが多い方が勝つ、という気がするよ」
「どうして?」
「ヤマトも背負うものが多かったからだ」