2013年05月16日
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三百字小説『愚僧は軍曹』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 愚僧は軍曹である。

 愚僧は、人の殺生を禁じられた宗教者であると同時に、命令によって敵を殺す軍曹でもある。矛盾していると思うかね?

 しかし、愚僧はここにいて、2つの職務を矛盾無くこなしている。

 その理由は簡単だ。敵は虫けらだからだ。我が宗教の戒律には、むやみな殺生を戒める戒律はあっても、虫を殺してはいけないという戒律は無い。

 今日も年配のつがいの虫けらを殺したが、人間は全て救出した。

 どうだ。拙僧は立派であろう。

 ……。某月某日。僧侶軍曹は戦死。両親を殺された少年による報復。動機は、両親を殺された怨み。僧侶が属する奇矯な新興宗教は敵対者を虫と見なして殺せと教えているという。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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