愚僧は宗教者であり、殺人など許容できない。ところが、従軍僧侶に指名されてしまい、とても困った。何しろ殺し合いをする組織に同行しなければならないのだ。
そこで、愚僧は目の前で愚かな戦争を行う者を粛正しようと考えた。しかし、非戦闘員が武器を使うと犯罪だという。どうすれば良いのか。従軍僧侶は軍隊に籍があるので、軍服さえ着ていれば正規の兵士と見なされて構わないらしい。
愚僧は軍服を着て味方の陣地の軍人を全て粛正すると、敵の陣地に向かった。
「敵が来たぞ! 集中砲火!」
軍服を着た愚僧は敵兵士と誤認されて撃たれた。
(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)