「SFの定番には『人類には発音できない名前』というのがある」
「それで?」
「実は、これは単なる冗談ではないことに気付いてきた」
「その意味は?」
「実は、人類には歌えない歌が既に当たり前のようにあると分かったからだ」
「ボーカロイドの歌は歌えないって意味?」
「そうじゃないよ。ボーカロイドとか、そういう勘違いした歌の世界は取りあえず忘れてくれ」
「それを勘違いと称するってことは、いったい何が言いたいわけ?」
「うむ。つまり一般論として普通に売られている音楽CDの世界で、既に人間が歌えない歌があるってことだ」
「ちょっと待て。人間が歌っているにも関わらず人間が歌えないというのかい?」
「そうだ」
「意味が分からないよ」
「つまりだね。人間の声すら素材として、声を加工してしまえばそれは人が真似できない世界に行くわけだ」
「どんな加工?」
「たとえば、声に残響を残して次の自分の声に手前の声の残響がかぶるとか、そもそも自分の声を多重録音して同じタイミングで違うことを言っている状態にするとかだね」
「でも、それって昔から可能だったことじゃないか?」
「そうだよ。可能か不可能かではなく、それが一般的になり、前提になったというわけだ」
「えー」
「記憶の光はそういう意味で、とても歌える気がしないね」
「つまり、『人類には歌えない歌の問題』の問題はヤマトすら既に侵食しているわけだね?」
「そうそう。でも、『人類には歌えない歌』の行き着く先は実は宇宙人ではなく、神であり宗教の世界なのだ。宗教的な恍惚感と分離できない世界に行き着く」
オマケ §
「そもそもヤマト世界の神とか信仰って何だよ」
「神や信仰なら出てくるぞ」
「どこに?」
「ウルクの神殿に」
「それヤマトの神や信仰とは違うから」
「じゃあ、シャルバート」
「それもヤマトの神や信仰とは違うから」
「シャルバートを否定するということは、貴様デスラーを神とあがめているな?」
「それも違うから」
「聖総統も聖とか言ってるから宗教がらみっぽいな」