大作家のX氏は、短編小説を依頼されていたが書けなかった。そこでやけになって紙にタンペン小説と書き殴ると、文字がタンポン小説に見えた。インクが滴って、ペがポに見えてしまったのだ。
X氏は確か丁度それが家にある思い付くと食べたくなった。そこで家内を呼ぶと、まさにそれを食べているところだった。X氏は思わず言った。
「おまえのタンポンを1つくれ」
すると殴られた。
そして、殴られた拍子にX氏は思い出した。家内が食べているのはタンポンじゃなくてポンカンだ。ならタンポンとはいったい何だっけ? そこでX氏はタンポンの謎を探る大長編に構想が浮かび、それに取り憑かれた。
短編小説は出来上がる気配も無かった。
(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)