「豊田有恒さんが何を語ったの?」
「初期のアニメとSF作家の関わり」
「なんで?」
「多数のSF作家が初期のアニメの関与したから!」
「歴史の話ってことだね」
「そうだな。世田谷文学館ってのはそういう場だ」
「それでどれぐいヤマトを語った?」
「少し。質疑応答コーナーでも少し。最大の話題はやはり手塚さんの話題だからね。でもヤマトも虫プロ系の人材が作ったと思えば遠くは無い」
「へー」
「でも、ハイジの話題はほとんど出ないのに、猿の軍団の話題もちゃんと出たのが偉い」
「なんで?」
「だって、豊田有恒さんは猿の軍団のメインスタッフの一員でもあるから」
「ぎゃふん」
感想 §
「面白い話はいくらでもあるが全部飛ばす」
「なんで?」
「面白ければ面白いほど、中身はやばいからだ」
「えー」
「ちなみに、豊田有恒さん本人からヤマトの話を聞くと、またちょっと違う。面白い」
「違うってどういうこと?」
「豊田有恒さんは、裁判で西崎サイドではなく松本サイドにいたわけだが、松本零士側から漏れ伝わってくる話とも、どうもまたちょっと違ったニュアンスだった」
「それってどういうこと?」
「ヤマトの真実は人数分だけあるのだろう」
「えー」
「豊田有恒さん、取っつきにくいところもあるけれど、実はけっこう冷めた突き放した視点でものを見ている人だからね。韓国が好きだろうが原発について言及しようが、イデオロギー的なサイドとはやや違う場所にいる」
「だから微妙に違う見方があってもおかしくないわけだね」
「事実かどうかは知らないよ」
「じゃあ、韓国の話をしたの?」
「いや、してない。その場のテーマが分かった人だから、関係無いことは言わないよ」
「原発の話は?」
「少ししたけど、SF作家のグループで見学に行ったときの話だから、やはり推進とか廃止とか言う話とは違う」
「わざわざ言及する意味があったの?」
「笑える話がいくらでもあったから話したのだろうが、もちろんここで明かす気は無い」
「ケチ!」
私的な感想 §
「出渕さんは豊田有恒さんのいわば身内みたいなものだからね。否定はしない。けれど肯定できるかといえば、それも微妙な空気感がある。その曖昧な矛盾したポジションがやはりいちばん面白い」
「えー」
「しかし、それは当事者だから立てる立場。だから思ったよ」
「どう思ったの?」
「全てのヤマトは他人のヤマト。そして、他人は複数いて、それぞれのヤマトは違う。おいらのヤマトは存在しない」
「存在しなくていいの?」
「いいとか悪いとかではないよ」
「じゃあ、なんでヤマトを見るの?」
「ヤマトは見るものだから」
「は?」
「他人のヤマトだから見るんじゃないか」
「ああ、そうか。自分のヤマトなら自分で作るものであって、見に行くものじゃないわけだね」
「そうだ」
「でもさ。同人でも何でもヤマトを作れば、それが君のヤマトになるわけだろう?」
「そうだ。そういう意味で、ファン側でも自分のヤマトを持つ人は大勢いるけれど、おいらは該当しない」
「なんで?」
「突きつめるとヤマトではなくなってしまうからだ」
「なんでだよ。凄いヤマトをなぜ考えない」
「考えると、オルランド・2Kクラス・バトルクルーザー『カズサ』になり、ルム級巡洋艦『オスルム』になり、JSS-HC3『高尾』になってしまうのだよ」
「JSS-HC3ってなに?」
「Japanese Star Ship, Heavy Cruiser No.3ってことだ」
「あ。誤字だ。高尾じゃなくて高雄だろ?」
「高尾なんだよ」
「なんで? 巡洋艦なら高雄だろ」
「理由は今のところ秘密だ。ストーリーに関わる重要な意味がある」
「どんなストーリーだよ」
「ないしょ」
「じゃあ、なんで模型のヤマトは作ったわけ?」
「気の迷いだ」
「でもさ」
「そもそも、あれは玉盛ヤマトであって、おいらのヤマトではないよ」
「改造したじゃないか」
「再改造は休止中で困った困った」
「えー」
「思い切って、エイヤッと始めればそれでいい話なんだけどね。お手本が無いからそれで上手く行く保証が無い」
「ならやれよ」
「今は、アベンジャーを作りたい」
「アベンジャーも早く塗れよ。ヤマトメカなんだろ!」
「実は透明パーツがけっこう入っているのでマスキングしないと塗れないの」
「そんなつまんない理由かよ!」
「でも、その前にオリョーノク完成させないと」
「なんでだよ」
「いつ入荷するか分からない輸入模型がやっと来たから!」
「そんなつまんない理由かよ!」