2013年08月08日
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三百字小説『可憐なカレンと枯れないカレン』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 もてない彼は、もてないから思い切って、ダッチワイフを買いに行った。

 しかし、彼はダッチワイフのカレンちゃんを買った帰りに泉に落としてしまった。

 すると女神が泉から出てきた。

 「あなたが落としたカレンは可憐なカレンですか? 枯れないカレンですか?」

 「いえ、ダッチワイフのカレンです」

 「正直なあなたには、最大の美しさを誇る可憐なカレンと、永遠に老いない枯れないカレンを差し上げましょう」

 「わーい」

 しかし、可憐なカレンは三日で他の男と駈け落ちした。枯れないカレンはただの人形だった。

 やはり彼は女にもてない男だった。

 彼は、一生ダッチワイフを抱いているのがお似合いだ、と泉の女神から言われたような気がした。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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