「威力偵察というのは、本来交戦することで敵の戦力を推し量る行為を言う。ところが、ドメルが行った威力偵察と称する行為にはこれが含まれない」
「そもそもヤマトの戦力は既知であり、戦力を推し量る行為などしていないわけだね」
「実際に行われたのは以下の2つだ」
- 接近と離脱を繰り返してヤマト乗組員を消耗させる (交戦はしない)
- 待ち伏せ地点にヤマトをワープさせるために、攻撃させた (ガミラス側が一方的に撃っただけであり、ヤマトは撃ち返していない。つまり、交戦を通してヤマトの戦力を推定する手段たりえていない)
「いずれも、威力偵察とはちょっと違うわけだね」
「しかし、威力偵察という言葉を横に置いてドメルの行動に限って注目すると話が変わってくる」
「どう変わるの?」
「ヤマト1974の第15話で、ドメルが駆逐艦にヤマトを挑発して引き付けておけと言っている。つまり、これに相当する描写だとすれば間違っているとも言えなくなってくる」
「先行する小型艦がヤマトに影響を与えるわけだね」
「更に言えば、ヤマト1974の駆逐艦の役割は艦隊前方の哨戒だったと思われる」
「大艦隊を差し向けるだけに、何か問題があれば早期に発見しておきたいわけだね」
「そうだ。演習であっても事故は起きる」
「ほんとに?」
「第四艦隊事件を調べてみろ」
「ひぃ~」
「そして、哨戒は広い意味での偵察の一種とも考えられる」
「あれ?」
「だからさ。もうちょっと明示的にヤマトに絡んでくる小型艦の任務を表現するために偵察という言葉は間違っているとは言えないわけだ」
「ははぁ。だから威力偵察……」
「しかし、ここで矛盾が起きてしまう」
「矛盾とは?」
「2199のドメルが差し向けたガミラス艦は、実は本隊に先立って哨戒を行う先行艦ではないからだ」
「そもそも偵察目的じゃないわけだね」
「そうだ。だからそこで話が迷宮に迷い込む」
「どう迷い込むの?」
「WikiPediaによると偵察には2種類ある」
- 隠密偵察 (隠れて調べる)
- 威力偵察 (交戦して調べる)
「なるほど」
「ところが、隠れないが、かといって交戦もしないという偵察が存在しない」
「確かに堂々と見てくる偵察は考えにくいね」
「部活でライバル校を偵察に行く、といったときは正体を隠さないで見に行くかも知れないが、それはまた別の話だ」
「確かに」
「そうすると困ったことに表現する言葉が無くなってしまう」
「無いのか!」
「そうだ。偵察と呼称する限り無いのだ。だから、少なくとも隠れていない以上隠密偵察とは呼べないとすれば、威力偵察という用語しか残らないのだ」
「つまり、その結果話がおかしくなってくるわけだね」
「でも、その理由はヤマト1974にあって、それも踏まえて考えるとまた違った光景が見えてくる」