お主の顔には死相が出ておる。……と占い師に言われて俺は腹を立てて家に帰った。そして、自分の死相に文句を言った。
「おまえのおかげで変なこと言われたぞ。どうしてくれる」
「しかし、死相は死の前兆を知らせるのが役割。死相は変えられない」
「この扁平足!」
「扁平足じゃないもん!」怒った死相は家出した。
もう占い師に変なことを言われることもなくなった。死の気配さえ遠のいた。オレは戦場を渡り歩く不死身の傭兵になった。大金を稼いだオレは昔なじみの女にプロポーズに行った。だが、そいつは既に家出した死相と結婚していた。
「だって、今にも死にそうな顔をした死相さんの方が気になるの」
「扁平足でもか!」
「顔に足はないわっ」
(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)