2013年08月22日
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三百字小説『死相の失踪』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 お主の顔には死相が出ておる。……と占い師に言われて俺は腹を立てて家に帰った。そして、自分の死相に文句を言った。

 「おまえのおかげで変なこと言われたぞ。どうしてくれる」

 「しかし、死相は死の前兆を知らせるのが役割。死相は変えられない」

 「この扁平足!」

 「扁平足じゃないもん!」怒った死相は家出した。

 もう占い師に変なことを言われることもなくなった。死の気配さえ遠のいた。オレは戦場を渡り歩く不死身の傭兵になった。大金を稼いだオレは昔なじみの女にプロポーズに行った。だが、そいつは既に家出した死相と結婚していた。

 「だって、今にも死にそうな顔をした死相さんの方が気になるの」

 「扁平足でもか!」

 「顔に足はないわっ」

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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