「温泉回だけどさあ」
「うん」
「実は若者の成長物語は挫折を知って乗り越えねばならないのだ。そういう意味で、どう挫折を描くのかが重要。特に、こういう達観した欲望に乏しい主人公には難しい」
「それと温泉回になぜ関係が」
「金や力になびかない主人公を本気にさせるにはエロしかないからだ」
「えー。エロかよ」
「だから、雪姫は自分の身体を餌にして攻めてこさせてコテンパに返り討ちにするわけだ」
「つまり、それってフェアな勝負ではなく最初から負かす気で挑発してるってこと?」
「物語としての結末は意外性を必要するので、雪姫が負けてしまう可能性もあるけどね。でも、とりあえずは負け掛かっている」
「なるほど」
「あとは九郎丸の恥ずかしい表情だな」
「で、九郎丸って、男なの、女なの?」
「知らん。でも、九と丸は文字の形が似ているから面白いね」
「そこかっ! そこかよ!」