「今日はTOHOシネマズで映画が1000円なので、何か見るかと思った」
「何を見たいと思ったの?」
「ミニオンか鷹の爪」
「理由は?」
「怪盗グルーの前の映画は良かったし、ミニオンは可愛いから」
「鷹の爪は?」
「ETVで放送するようになって、どのように映画が変質したのかが知りたかったから」
「鷹の爪に期待している訳じゃ無いのか」
「ETVで見た良い子も来るからね。映画は何らかの形で変質せざるを得ないと予想した」
「結局、鷹の爪を選んだ理由は?」
「府中を見たら、ミニオンは1日数回上映していたのに、鷹の爪はプレミアスクリーンで1日1回上映だったのだ。だから鷹の爪は見ておかないと終わってしまうと予測した」
「結論は?」
「予想よりも良かったよ」
「どうしてそう言い切れる?」
「鷹の爪を見る前はスティーブ・ジョブズの過剰に美化されたポスターを見て心底胸くそ悪くなったけど、鷹の爪を見終わったあとで同じポスターを見ても平然と無視できた。胸が鷹の爪の映画の余韻で一杯だったからだね」
「君の胸を満たせるぐらいの中身はあったわけだね」
上映前 §
「結局、やはり自分の基本映画館はTOHOシネマズ府中。TOHOシネマズ渋谷でもバルト9でも新宿ピカデリーでもない」
「落ち着いたの」
「そうだ。やはりしっくり来る」
「どのへんがいいの?」
「設備も比較的新しいし、人が少なくてゆったりしている」
「ふーん」
「というわけで、オマケをもらってプレミアスクリーンの最前列に入ったよ」
「オマケはなに?」
「新聞」
「DVDは?」
「もう無かったようだ」
「えー」
「最前列で見たのは自分1人だけど、終わった後で振り返ると、半分以上の席は埋まっていた感じだな。手応えはあった」
「最前列でいいの?」
「プレミアスクリーンの最前列は特等席だ」
映画の感想 §
「この映画はね。吉田君の前説、バジェットゲージ、プロダクトプレイスメント、絵が雑になる総統、スイッチで幽霊になるフィリップなどなど。以前の映画から続く仕掛けが満載であった」
「マンネリ?」
「実はね。それらの仕掛けは全部映画の軸じゃないんだよ」
「は?」
「だからさ。この映画は予想を裏切って凄く面白かったけど、実は面白い理由は仕掛けに無いわけ。軸がしっかりした骨太の映画なんだよ」
「どのへんが太いわけ?」
「やはりね。オキテマス・スマイルと娘のキャラクターが絶品なんだと思う」
「オプティマス・プライム?」
「オキテマス・スマイルだ」
「どういうこと?」
「司令官を退任したのに司令官だと偽る父親と嘘と知りつつそれを信じる娘の葛藤」
「葛藤?」
「自分に対する葛藤だな」
「えー」
「ともかく、オキテマス・スマイルは凄いダメ野郎で、娘が非常に良く出来た娘だ。でも、2人とも心に傷がある」
「そこがいいわけ?」
「そうだ。オキテマス・スマイルを見てるだけで十分に映画が映画として成立している感じだよ」
もっと映画の感想 §
「エンドロールを蹴るというのは、以前にも例があると思う。のび太の魔界大冒険とか」
「そうか」
「でも、さすがに映画の途中で結末をネタバレする映画は知らないな」
「えー」
「でも本当の結末はそこではないから。実はネタバレになっていない」
「凝った構成だね」
感想の感想 §
「見る前はね。今月はこれしか劇場で見られない可能性があるのに、あえて鷹の爪というチョイスは物好きだと思った」
「わはははは。他に話題の映画は多いものね」
「でも、そこであえて物好きなチョイスに走るのがおいらの個性だと思って見にいったよ」
「わはははは。自覚的に脱線するのか」
「でもね。見て良かったよ。あれは良い映画だった」
「仕掛けじゃ無くて映画としての芯がってことだね」
「そうそう」
それはさておき §
「で、ETVで放送するようになって、過激さは落ちていた?」
「いや、それは感じなかった」
「なんで?」
「大家とキスして歯の裏側に舌を入れていて、しかもみんな吐いていた」
「ひでえ!」