2013年10月03日
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三百字小説『従順ヨウカン』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 従順ヨウカンは海軍の船だった。しかし、ヨウカンなので、とても柔らかかった。とても兵器とは思えなかった。それもそのはず、前線の兵士に栄養を補給するための船だったからだ。

 しかし、重さが重く、軍縮条約の各国の偉い人は重巡洋艦に分類して規制すべきと言い立てた。

 積み荷が重いという理由で難癖を付けられたタンカーと一緒に従順ヨウカンは抗議した。しかし、積み荷の石油を抜けば軽くなるタンカーは軍艦扱いを免除されたが、ヨウカンはダメだった。

 しかし、諦めきれない関係者は妙案を思い付いた。

 食べてしまえばいいんだよ!

 従順ヨウカンは従順に食べられた。

 そして重さは0になった。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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