「すげえぞっ! これは凄い!」
「まず説明」
「小林誠さんはHYPER WEAPONという本を不定期に出している。これの最新版が2013sだ。複数の作品のビジュアルが掲載されている。メインは飛行機模型雑誌のスケールアヴィエーションで連載された飛ぶ理由だが、内容はそれに限定されず様々」
「それで?」
「本を開くと扉に先尾翼のプロペラ機のイラストが載っていたのだが、これが素晴らしくていつまでも見ている」
「なぜそれが気になるの?」
「震電風の架空機の氾濫に辟易したから。その原点は映画のスカイクロラの散香にあるような気がする」
「分かった。イノセン・テイセスで散々散香を乗り回した君には気になるわけだね」
「そうそう。ちなみに新書で最初に出たスカイ・クロラのイラストの機体はそれほど震電風というわけではない」
「ふーん。それで?」
「北欧空戦記でサーブJ21に触れた身としては、エンジンを後ろ向きに付けるとしても、他にいくらでもやりようがあるだろうと思う。たとえば泉流はそうだね。別の流儀だ」
「それで君としてはどうしたわけ?」
「零戦の前後を逆転してキットを組んでみたりもしたが、釈然としない部分は残った。でもこのイラストは完璧だ」
「だから震電風ではないこのプッシャー機のイラストが良かったわけ?」
「そうだ。ある意味で自分のもやもやがこれ1枚で晴れた。画期的なイラストだ」
「なるほど。スカイクロラから完全に離れてやっと収束したわけだね」
「甘い!」
「なんで?」
「実は、このイラストは劇場版スカイクロラの企画を原作者に通すために描かれたものらしいからだからだ」
「えっ?」
「小林誠さんのTwitterのTLから主要な部分を転載する」
Hyperweapon 2013s Raison du vol 1ページ目と、最後奥付けページの飛行機は、 not but airていう小説からイメージしたもの。
映画企画を原作者に許諾頂く時のプレゼンデザイン。企画はスカイクロラとして完成
本番時には、監督のスタジオのデザイナーの物に差し替えられることは分かっていたので、比較的自由に、でも小説の印象を自分なりに構築しながら。
時期的には2005年。このあと、本件を依頼してきたプロデューサーとは「西の善き魔女」製作に入った。
企画デザインのとき、スカイクロラは個人的にちょっと…な感じだったので、二作目のnot but air (ナ・バ・ティア)から印象を引っ張ってきている。
釜山映画祭でスカイクロラがICEと一緒に招致されたときは、ちょっと不思議な感じがした。ちなみに奥付けページ右下が「教官」の飛行機。
「つまり、結論は何?」
「無駄な震電風架空機ブームへの処方箋は、ブーム発生前から既に描かれていた。こんなに面白い話は無い」
「なんてこった」
「全ての散香を知りたい人はHYPER WEAPN 2013sをぜひ買え」
「ずいぶん高い買い物だね」
「隘路を歩むとはそういうことなんだ」
「ひ～」
「というわけで、おいらはハセガワの猫実工大版震電を作らねばならん」
「なんでそこにつながるんだよ」
「いや、昔買ったキットがまだ組み立て中なので」
「震電は震電があればいいってことだね。震電モドキは要らないってことだね」
「そうだ。この機体はむしろ震電よりX-02 Wyvernにイメージが近い……と個人的には思った」
オマケ §
「ちなみに、奥付ページのイラストも絶品だ。Twitterでは右下に言及しているのだが、左下のハイテク複葉機のデザインもイカしていていいぞ」
「メインコンテンツでもないのに、楽しそうだね」
あとがきのあと §
「それでプッシャー機のわだかりから解放された君は次に何をするのだ?」
「ネットレンタルのTSUTAYA DISCASの定額リストに西の善き魔女を入れた。リストに入っているタイトルを消化したら、次は西の善き魔女を見るよ」
「なんで?」
「だって、この魅力的な飛行機の延長線上にあるのは映画のスカイクロラではなく、西の善き魔女なんだぜ」
