患者はぎっくり腰だった。しかし、人に触れられるのを嫌って、ガラス越しの診察を希望した。
「それじゃ診察ができません。ガラスのこっちに来て下さい」
「いやだっ!」
「じゃあ、ずっとぎっくり腰のままでいてください」
「それもイヤだ!」
「じゃあ、こっちからガラスの向こうに行きますよ」
「そ、それならいいかも」
いいのかよっ!
私はガラスを取り去って毎日ランニングすることを提案した。健康的に身体を毎日動かしていたら、そう簡単にぎっくり腰になどならないと思うからだ。
(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)