2013年11月14日
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三百字小説『ガラス越しのぎっくり腰』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 患者はぎっくり腰だった。しかし、人に触れられるのを嫌って、ガラス越しの診察を希望した。

 「それじゃ診察ができません。ガラスのこっちに来て下さい」

 「いやだっ!」

 「じゃあ、ずっとぎっくり腰のままでいてください」

 「それもイヤだ!」

 「じゃあ、こっちからガラスの向こうに行きますよ」

 「そ、それならいいかも」

 いいのかよっ!

 私はガラスを取り去って毎日ランニングすることを提案した。健康的に身体を毎日動かしていたら、そう簡単にぎっくり腰になどならないと思うからだ。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦