2013年12月12日
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三百字小説『息を継ぐ者』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 ヘ太郎は、泳ぎが下手だった。

 いくら畳の上でフォームを改善しても、10メートル以上泳げなかった。

 思いあまって先輩に相談した。

 「息継ぎが出来ていない」と先輩は指摘した。「これでは息が続かず泳ぎ続けることができない」

 「どうすればいいんですか!」

 「息継ぎを練習するんだ!」

 ヘ太郎は、必死に息継ぎを練習した。

 そして、ついに息継ぎマスターになった。誰にも負けないほど息継ぎが上手になった。

 「これなら25メートルだろうと50メートルだろうと泳げるぞ」先輩も誉めてくれた。

 さっそく、ヘ太郎はプールに入った。しかし、全く距離は伸びなかった。

 「なぜだ!」

 「息継ぎだけしていても前に進まないよ。泳ぎも練習しろよ」

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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