ヘ太郎は、泳ぎが下手だった。
いくら畳の上でフォームを改善しても、10メートル以上泳げなかった。
思いあまって先輩に相談した。
「息継ぎが出来ていない」と先輩は指摘した。「これでは息が続かず泳ぎ続けることができない」
「どうすればいいんですか!」
「息継ぎを練習するんだ!」
ヘ太郎は、必死に息継ぎを練習した。
そして、ついに息継ぎマスターになった。誰にも負けないほど息継ぎが上手になった。
「これなら25メートルだろうと50メートルだろうと泳げるぞ」先輩も誉めてくれた。
さっそく、ヘ太郎はプールに入った。しかし、全く距離は伸びなかった。
「なぜだ!」
「息継ぎだけしていても前に進まないよ。泳ぎも練習しろよ」
(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)