「なんで公開初日に見たの?」
「その日が、千円で映画が見られる日だったから!」
「……つまんない理由」
「でも、面白かったぞ」
どこがいいのか §
「どこがいいんだ?」
「構成が凝っている。ウィザード編とガイム編の物語が2本あるのだが、実はそれぞれが1本のお話であると同時に、全編通して1つのお話になっている」
「というと?」
「ウィザード編は、死んだコヨミを吹っ切る晴人の物語なのだが、実は吹っ切った結果として、人生の先輩たり得る資質を持つ。そして、ガイム編では人生の先輩として振る舞う。単に戦いのヘルプに来るわけではなく、勇気づけるために来る」
「じゃあガイム編とは何?」
「もともと敵対していた連中が1つになって戦う因縁を乗り越える話になるわけだが、その『結集』という要素にウィザードも上手く溶け込んで一緒に戦えるわけだ」
「作品の一貫性とはそういうこと?」
「それだけじゃない。実は心象風景に映画なんだよ」
「は?」
「心象風景の映画とは、要するに1つのフレームに自分が2人いるような世界だ。そして、ウィザード編では同じ画面に晴人が2人いたりする。アンダーワールドに入られる晴人と、アンダーワールドに入っていく晴人の両方がいるんだ」
「ガイム編は?」
「実はガイムと武神ガイムというそっくりのライダーが出て来て、ビジュアル的に分かりにくいのだが、実はそこが一番面白いキーポイントなのだ。更に言えば、実はガイム編では歴代全平成ライダーの武神版が存在するのだが、それは別人なのだ。つまり、ウィザードと武神ウィザードは別人なのだ。もう1人の自分がいる世界なのだ。自分とは違うもう1人の自分がいるのが心象風景の1つの形だ」
「それだけ?」
「戦国武将も史実の武将とは似ても似つかぬ別人が出てくる。別の世界ということになっているが、もちろんそんな世界は無いので、これも一種の心象風景だ」
「ふーん」
「そもそも過去の思い出に満ちた晴人のアンダーワールドそのものが心象風景なのだしね」
「それでまとめるとどうなんだよ」
「こういうものは映像にするのが難しい。もともときっちりとした形があるものではないからね。それに取り組んだ意欲作だと思うよ」
「それで?」
「この映画が成功したのは、作品に分かりやすい軸を設定したことだと思う。ウィザード編はコヨミ、ガイム編は家康だ」
オマケ §
「アクセルが秀吉で、奥さん(所長)が茶々っていうのは楽しかったぞ」
「わははは」
「ガイム編のオープニングのダンスも色気があってダイナミックで良かったぞ」
「それだけ?」
「でも、結局黒いコヨミが可愛かったのが一番じゃないか? 水上を歩いてくる映像とか、けっこうグッと来るぞ」
「オカマはいいのかよ。プレーンシュガーでいいのかよ」
「いやまあ、それはそれとして」