2013年12月26日
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三百字小説『チャコットけんちゃん』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 けんちゃんは、バレエ用品店の店頭で、いつも衣装を見ていた。

 「素敵な衣装だ。でも僕は醜いアヒルの男の子だから着られない」

 ある日、謎の魔法使いがけんちゃんに声を掛けた。

 「私にまっかせなさい!」

 魔法使いは、けんちゃんを鏡台の前に座らせると美しく化粧しました。

 「あなたは、本当は醜いアヒルの男の子じゃないの。美しい白鳥だったのよ!」

 「わあ、きれい。僕って、こんなに綺麗だったの……。って変態さんの仲間になる気はねえ!」

 けんちゃんは女装ショップの店長を殴り倒すと化粧を洗い落として出て行きました。

 その後のけんちゃんの行方を誰も見ていません。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

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