2014年01月09日
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三百字小説『電国良いとこ一度はおいて』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 天国は良いところだ、酒は美味いし姉ちゃんは綺麗だ、と聞いたことはある。

 だが、電国良いとこ一度はおいてとは初めて聞いた。そもそも電国とは何だろうか。電気の国だろうか。オール電化だろうか。

 俺は理想のパラダイスを信じて海を渡り山を越えて電国に辿り着いた。

 しかし、そこには古びた電車しかなかった。

 「わりいわりい、ここは電国じゃなくて国電のテーマパーク。電国は案内パンフの誤植なんだよ」

 「国電ってなんだ?」

 「JRが国鉄って呼ばれていた時代の電車。だからここには古い電車しかないよ」

 「それが良いとことなか?」

 歓声を上げながら夢中で古い電車の写真を撮っているマニアの一団が園内に入ってきた。

(遠野秋彦・作 ©2013 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦