「昔ねえ、朝日ソノラマで軍艦泥棒って小説があってねえ。けっこう面白かったけどあまり見かけない著者名だった」
「ふーん」
「思い出と言えばそれだけなんだけどね」
「それで?」
「今頃とんでもないことが分かったよ」
「なんだい?」
「著者の高橋泰邦さんって、ホーンブロワーやボライソーの翻訳をやってたんだよ」
「有名な海洋冒険小説じゃないか」
「読んでないけど、どちらも存在は知っていて横目で見ていたシリーズだよ。超メジャーで有名だ。びっくりしたよ」
「そういう大物の小説ってことだね」
「でもそれは前半」
「まだ何かあるの?」
「アシモフのミクロの決死圏は生まれて2番目のSF文庫本。それを翻訳していたとは気付かなかった」
「軍艦泥棒の著者とイコールとは思わなかったわけだね」
「凄くビックリだよ」
「驚愕は過去に眠っているわけだね」