2014年02月06日
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三百字小説『家具屋姫』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 姫は家具屋の娘だった。商人の娘ではあるがおっとりした性格で姫とあだ名されていた。

 5人の求婚者が現れた。「姫、私と結婚を!」「これが鉢です」「これが玉の枝です」「布です」「珠です」「貝です」「差し上げます!」

 姫は5人に課題を出した。「この穴の開いた欠陥家具を売ってきた人と結婚しましょう」

 しかし、欠陥家具をそれと知って買おうとする者などおらず、誰も家具を売れなかった。

 全員が辞退すると課題の家具は邪魔になった。

 家具屋の番頭は欠陥家具をリサイクル業者に持ち込んで、囁いた。「穴は開いてますが修理すれば1000ゴールドで売れるお値打ち品ですよ」

 家具は見事に売れて家具屋姫は番頭と結ばれた。

(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦