2014年03月06日
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感想「サムライ7」

Written By: トーノZERO連絡先

「サムライ7をやっと全部見終わったよ」

「感想はどうだい?」

「筋が通る結末で、非常に面白かったよ」

「どこが面白い?」

「顔は綺麗で心根もいいのに、醜態を晒しつつ必死に大人になるカツシロウとか、せっかく女を助けに都に乗り込んだカンベエが助けようとした女が都を擁護してしまって捕まるとか。勝った挙げ句、実は勝ったのは農民であってサムライでは無いと言うとか。あれだけ活躍したギャグメーカーのキクチヨが最後死んでしまうとか」

「そうか」

「巨大ロボ的な機械のサムライが闊歩して都が大きな空中戦艦だとか、普通に考えればアホらしい設定なんだけどね。常に足が地に着いた話なので浮かないで済んでいる。まあ空中戦艦の都は空中戦艦だから浮いているのは確かだけどね」

「ひ~」

「結局最後まで7人のサムライと敵のウキョウは素顔の戦士なんだ。たぶん、ロボに乗ってロボ戦やったらこれほど面白くはない。最後に頑張るカツシロウの顔が見えてこその面白さだろう」

「良かったわけだね」

「そうだ」

「その割に話題になってない感じがあるけど」

「そうだ。問題はそこだね。良く出来てるのに、その水準に見合った話題になっていない。これは2000年代前半頃に非常によくある特徴なんだ」

「出来が良いのに話題にならないアニメが?」

「そう。そういうアニメがとても多い」

「なんで?」

「良い作品を作ろうとすればするほど、実はオタクのニーズのツボを外すという現象が起きるからさ」

「は?」

「つまりね、サムライ7も同じように良い作品であろうとすればするほどオタクのツボを外してしまうわけ」

「意味が分からないな」

「つまりね。もしもオタクに受け入れ可能なアニメにしようと思うなら、まずカンベエはすぐ死なないとならない。「シャアだ、赤い彗星の」と言って死ぬ。で、カツシロウがなんだか良く分からないニュータイプの特殊能力でばったばったと敵をなぎ倒して神無村を救って感謝されるわけだ。そういう話なら受け入れ可能だけど、きっとつまんないクソアニメになって終わり」

「ひ~。分かりやすいようにポイントを教えてくれよ」

「要するにさ。サムライ7は、カンベエが負けて農民が勝つあらすじで、その過程でカツシロウが挫折を経験して子供から大人になる話なんだよ。でもね、オタクが望んでいるのは自分達を褒め称えるアニメ、一切の努力無く自分達が優秀であると承認されるアニメなんだよ。つまり、カツシロウが挫折なんかしないでカンベエ抜きで活躍する世界なら受容できる。でも、カツシロウがみっともない仕草を見せたり、挫折したりするのはノーサンキューなんだよ。それは自分が挫折したくないことの裏返しだ」

「ひ~」

「オタクっていうのは本質的に大人になりたくないからオタクをやってるので、大人になる話は基本的にNG。受容されないと思っていい。でも物語の類型の1つが成長物語であり、子供が大人になる話なので、きちんと物語を語ろうとすると必然的にオタクの多数派とは水と油の関係になる」

「それはサムライ7を誉めているのかい? それともオタクを馬鹿にしているのかい?」

「馬鹿になんかしてないよ。ただ分析しているだけだ」

「じゃあ水と油だと何が起こるんだ?」

「誰かに見せれば唸らせることができる良作をまた1つ知ることができて、おいらは満足だが、オタクにだけは見せても無駄かも知れない」

「最後にまとめてくれよ」

「見たらきっと面白いと思うよ。特に後半。ウキョウが最高だから」

「でも見ても分からない人もいるんだろう?」

「いると思うけど、これを読んでいるあなたがそれに相当するかは知らない。まずは見てみるといいと思うよ。まあ、アニメは嗜好品だから好き好きだ。自分は好きじゃないってことはあるかもしれない。でも、これを面白いと思う人の割合は、割と多いのではないかと思うよ」

「見るチャンスが無いから気付いていないだけ、という人がかなりいそうだね」

「全部でDVD13枚だから、ともかくレンタルで借りてじっくり順次見ていくといいと思うよ。いきなりセルDVDを全部集めようとすると大変だから」