「なんだこれは。面白いじゃないか」
「ふーん、地震が面白いの?」
「違う。正妻と後妻候補者が対決する映画だよ。三角関係だ」
「ひ~」
「正妻と後妻が対決する修羅場に向かって映画は盛り上がるがその直前で本当の修羅場が襲来する。ともかく死ぬ死ぬみんな死ぬ。燃える燃える水没する水没する。愛は流れる死体は流れる」
「ひ~」
「本物の修羅場が見られるぞ」
「じゃあ君の考えは?」
「ある意味で、本物の修羅場を描ける最後の世代の映画じゃないのかな」
「今はもうダメってことだね」
「関東大震災ところか、もう空襲の経験者すらろくにいないだろう」
「確かに」
「これは1980年の映画だけど、ここまで来ると風景が現代にかなり近いね」
「新宿の高層ビルの本数は?」
「まだちょっと少ないな」
「他には?」
「関西で人気があるのも分かる。東京もんが死ぬ死ぬ。あっさり大量に死ぬ。虫けらのように死ぬ。しかも救えない」
「東京崩壊だね」
「しかし災害で愛が復活するのも、最後に何が起きたのか明らかにならないまま終わってしまうのもいいなあ。この展開も好きだな」
「そんなに?」
「離婚する寸前まで行った本妻も愛が残っているのが凄く上手く描かれていていいよな」
「愛があるのに離婚なのか?」
「狂った祖母の要求だな。そこもいいぞ」
その他に §
「このマンションは実在するそうだ。しかもまだあるらしい」
「場所はどこなんだい?」
「うん。世田谷という情報しか無かったが、実は場所を特定した」
「どこだよ」
「内緒だ」
「でも世田谷なら自転車で行けるだろう?」
「そうだ。これは見に行きたい場所だな」
オマケ「映画は嘘つき」 §
「映画というのは本質的に嘘つきだ」
「えー」
「新幹線大爆破だって、実は新幹線のシーンはそれほど長くない。実は潰れた町工場のオヤジの話。これも地震の映画というよりも、正妻と後妻候補を天秤に掛けるインモラル映画」