「最近さ、下高井戸シネマでやってるような映画の方が気になる」
「TOHOシネマズはいいのかよ」
「そっちよりもな」
「じゃあ、この映画は何だよ」
「フランソワ・オゾン監督のフランス映画だ」
「内容は?」
「17歳の少女がオナニーして処女喪失してそのままおっさん相手の娼婦になるが、家族にばれるという話だ」
「なんだ、その夢も希望も無いえげつない映画は」
「フランス映画って、本当にえげつない話緒を美しく作ってしまうから好きだぜ」
「えー」
「ほんまにえげつない」
「でも美しいの?」
「そうだ。映像も綺麗だが、音楽が特に凄い。ダンスシーンの音楽なんで思わず聞き入ってしまうほど凄い」
「ひ~」
「結局さ、昼顔的な映画なんだよ。昔からそういう映画があるので、特異な映画というわけでもない」
「昼顔ってなに?」
「何不自由ない若妻が自分から娼婦になるが仕事がこじれてばれる」
「何そのそっくりな展開」
「でも結末は違うんだよね」
「どう違うんだ?」
「昼顔は解決して終わるのだ。しかし、17歳は娼婦に戻る含みを残した終わり方なのだ。そもそも、最後に出てきた腹上死した男の奥さんが実在の女性なのか幻なのかも分からない。そこは不明確なまま終わってしまうのだ。しかし、そこもいい」
「えー」
「特にいいのが処女喪失の時、覚めた目で客観的に見ている第2の自分がいることだな」
「ひ~」
「凄くインモラルで面白かったぞ」
「どのへんがインモラル?」
「母親の怒りに嫉妬が含まれていたり、義父を誘惑してしまったり」
「ひ~」
オマケ §
「そういえば、この映画もAppleのロゴが目立つな。ノートの背面の光るロゴ。ああいうのは、出資してもらっているとか、機材の提供を受けているとか、そういう事情が無いならやらない方がいい」
「なんで?」
「客は金を払って映画を見に来たのだ。Appleの宣伝を見に来たわけでは無い」
「もし、素晴らしいApple教の布教の一助になればと思って見せているのだとしたら?」
「だから、客は金を払って映画を見に来たのだ。そのことが理解できていないなら映画を作る資格なんて無いから今すぐ映画作りはやめろ。他にいくらでも本気で映画をみえもらいたい作り手がいるんだ。こっちは本気で映画に命賭けてる人達が作った映画が見たいわけだ。便乗して何かを広めようとする本気じゃない映画は見たくない」
「でもスポンサーの宣伝が入っているのはいいわけだね?」
「それは止むを得ない。それによって映画が成立するなら一概に否定するものではない