死相は走っていた。
走れ死相。友のために。
彼が戻らないと友は死んでしまうのだ。
走れメロスのように。
死相は顔の表情に過ぎなかったが、死あるのみとされた戦場を渡り歩く友とはいつも一緒だった。運良く死を回避し続けた彼は、いつの間にか死相と友達になっていた。
そして、今は友のために疾走していた。
時間ぎりぎりになって彼は戻った。
友は処刑を回避されたのだ。
しかし、友の顔に死相が戻ると、友は言われてしまった。
「命が助かったというのに、おまえの顔には死相が出ておるではないか。もしかして、処刑取り消しは誤報? やっぱり処刑はしておくべき?」
友は首を切られた。
(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)
注: これは三百字小説『死相の失踪』とは別作品です。ご注意ください。