2014年06月26日
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三百字小説『死相の疾走』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 死相は走っていた。

 走れ死相。友のために。

 彼が戻らないと友は死んでしまうのだ。

 走れメロスのように。

 死相は顔の表情に過ぎなかったが、死あるのみとされた戦場を渡り歩く友とはいつも一緒だった。運良く死を回避し続けた彼は、いつの間にか死相と友達になっていた。

 そして、今は友のために疾走していた。

 時間ぎりぎりになって彼は戻った。

 友は処刑を回避されたのだ。

 しかし、友の顔に死相が戻ると、友は言われてしまった。

 「命が助かったというのに、おまえの顔には死相が出ておるではないか。もしかして、処刑取り消しは誤報? やっぱり処刑はしておくべき?」

 友は首を切られた。

(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)

注: これは三百字小説『死相の失踪』とは別作品です。ご注意ください。

遠野秋彦