2014年08月21日
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三百字小説『大きな栗の木之下クン』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 木之下クンは栗の実だった。

 木之下クンの目標は売れっ子芸人だった。

 しかし、田舎では芸人の求人が無かった。

 「俺もいつか都会に言って芽を出してみせる」

 そして、木之下クンの願いは叶った。都会に進出したのだ。

 木之下クンはオーディションを受けまくったが、全て落ちた。

 木之下クンは都心の芸人スクールに行くことにした。

 大きな施設の中庭は緑が豊かに繁る良い環境だった。

 受付に行った木之下クンは言った。

 「ここで俺は芽を出したいんです!」

 「こちらにおいでください」

 木之下クンは中庭に埋められて、水を掛けられた。

 「おれは栗の実、種子じゃねえ!」

 結局、木之下クンの芽は出なかった。

(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)

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