木之下クンは栗の実だった。
木之下クンの目標は売れっ子芸人だった。
しかし、田舎では芸人の求人が無かった。
「俺もいつか都会に言って芽を出してみせる」
そして、木之下クンの願いは叶った。都会に進出したのだ。
木之下クンはオーディションを受けまくったが、全て落ちた。
木之下クンは都心の芸人スクールに行くことにした。
大きな施設の中庭は緑が豊かに繁る良い環境だった。
受付に行った木之下クンは言った。
「ここで俺は芽を出したいんです!」
「こちらにおいでください」
木之下クンは中庭に埋められて、水を掛けられた。
「おれは栗の実、種子じゃねえ!」
結局、木之下クンの芽は出なかった。
(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)