空襲だった。マツコはやっと数寄屋橋まで逃げ延びた。ナツオも同じだ。
数寄屋橋で出会った2人はすぐ恋に落ちたが、どちらも家族が心配だ。
「生きていたら、半年後にまたここで会おう」
2人は数寄屋橋で再会した。ナツオは名前も聞いていなかったことを思いだした。
「君の名は?」
「あらばれちゃったの? これが私の縄よ」
コートをはだけたマツコの身体は縄でグルグル巻きにされていた。
「そ、それはSM趣味ってやつかい?」
「身体は御主人様のものだけど、心はあなたのものよ。ところで提案だけど、あなたも一緒に御主人様に飼われてみない? 奥様がペットを探していたの」
ナツオはマツコを川に突き落とした。
(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)