2014年09月13日
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世田谷文学館「日本SF展・SFの国」

Written By: 川俣 晶連絡先

「まあ取りあえず。自転車で行ける距離なので、行かないのもアレかと思って行ってきた。ついでに常設展の方も見てきた」

「それで感想は?」

「入口で上映していた、とり・みき作オリジナルアニメーション「日本SF黎明期 childhood's beginning」が凄かった。速すぎるし、誰だか良く分からない人が良く分からないエピソードで次々出てきて良く分からないのだが、おそらくとんでもないことを描いているのだろうと思った」

「そこは良かったわけだね」

「そう」

「その先は?」

「コレジャナイ感があったな」

「どうして?」

「確かに昔見た懐かしい本もあったが、これは何かが違うという要素も多かった。実は懐かしい本も武部本一郎のビジュアルも【それは違う気がする】要素と一緒にされた結果として、何も感じられない異物に変化してしまった気がした」

「もっと分かりやすく言うとなんだい?」

「最近よくあるパターンだが、過剰に分かりやすすぎるのだ」

「もうちょっと具体的に言うと?」

「過剰に分かりやすくまとまっている結果として、最も自分が重要だと思う要素だけが無い。他の要素は全て些細なのだ。他の要素は全て抜け落ちてもいいから、そこだけは伝えたい要素だけが抜け落ちている。最近のよくあるパターンだけどね」

「じゃあ、どうすれば良かったと思う?」

「まあ、普段人が来ない施設が夏休み企画で集客を狙うならこれで良かったのではないか?」

「現状肯定かい」

「とりあえず、SF界初期の面々の個人的な情報なんか見ても、接点が無いわけだから、ただ単に【そうか】としか思えない。かといって、20世紀少年とか鉄腕アトムを見せられても【そうか】としか思えない。確かに面白かったよ、とは思うけど、そこから先に広がらない」

「結局なんだい?」

「SFは既に死んでいた。【浸透と拡散】と言っていた時点で既に終わりつつあったのだろう。この展示は単なるSFの墓地だよ。死んだSFのあらゆる要素を集めてみたが魂だけは既に無い。どこにも無い。強いて言えば、歴史研究の中にしかない」

「それは何をやってもダメってことかい?」

「そうじゃない。そんなものはやり方次第さ」

常設展 §

「結局、1階も見てきたがそっちの方がまだ面白かった」

「たとえば?」

「ムットーニのからくり。まだ見ていないのをみんな見られたよ。しかも客が自分1人なのに上映してくれた。途中で他の客も来たけどね」