「今の君は、方舟の存在を完全に無視して追憶の航海だけで燃え尽きようとしているように見えるよ」
「まあ、それは間違って無いだろう」
「いいのかよ、それで」
「追憶の航海は、自分にとっていちばん良いヤマト2199であった。ヤマト2199が良いので昔のヤマトを処分したという人がいたが、おいらは追憶の航海だけ残してTVシリーズの2199は処分しても良い気分だ。気分だけだけどな」
「じゃあ、今言いたいことは?」
「できるだけ終わるまでに追憶の航海を見ておけよ。おそらく方舟始まったら見られる可能性は激減するぞ」
「BDかDVD買えばいいじゃないか」
「BDは既に持ってる」
「持ってるのに劇場行くのかい」
「うむ」
「今日の感想は?」
「やはりベースがいい。シーガルでヤマトに戻った古代に抱きつくユキのシーンのBGMとか、古代とユキが宇宙で再会するシーンのBGMとかも、ベースが良かった」
「ベースマニアめ」
「ともかくベースは凄く良くなってるよ。そこは嬉しい」
「他には?」
「そうだな。2199のキャラにはそれほど文句は無いのだが、実は徳川機関長に限っては上手く表情を描けていない気がしてきた。なんというか、子供が考えた可愛いおじいちゃんなんだな。本物の年寄りじゃない」
「手厳しいね」
「まあ、普通のアニメに比べれば破格に良く出来てるよ」
「あえて文句を言うならばだね」
「それからさ。追憶の航海はヤマト2199というドラマの贅肉をそぎ落とすことで骨格を赤裸々に明らかにしてしまった」
「それで?」
「いろいろな問題が見えてしまうが、おそらく10万人が不快感を示し、1万人が具体的な処方箋を示し、1000人は本当に改善できるだろう。でも、その1000人の誰かに任せると良い作品はできるだろうが、商業的に失敗するだろう……そんな気がした」
「作品の善し悪しと商業的な成功は別問題ってことだね」
「ヤマト2199は商業的に失敗してはならない。その要請は、作品の善し悪しとは違う次元で決着する」
「それでヤマト2199は成功しているのかい?」
「少なくとも府中ではそれほど悪くなかったと思うよ。今日も15人ぐらいの観客がいた。一週間ではあるが、客がまるでいない状況は回避できたようだ」
「それは最悪ではないの?」
「普通に通った経験からいえば、自分以外に数人というガラガラのスクリーンで見た経験も多い。10人以上いれば最悪ではない成果だと思うよ」
「良い成果とは言わないのだね」
「まあ、夏休みなどの時期の人気映画は満員になるからねえ。それには届いていないが、既に新宿などでやってしまった映画だという事情を考えれば善戦だと思う」
オマケ §
「見たかったヤマトの他に、見たかったヤマト2199も見えてきたよ」
「君が見たかったヤマト2199とはなんだい?」
「根本的な部分限れば23話以降の決定的な改変だな」
「具体的には?」
「結局、森雪が泣いて古代がくそでもくらえと言うようなヤマトだな」
「それはいったい?」
「とりあえずヤマトがガミラスを爆撃する。それまでのドラマで描いてきたガミラスの場所は全部破壊される。そして、633工区は落ちてきても良いし波動砲で破壊しても良いが動機や結果は変更される。ヤマトを破壊するために落下した633工区だが、それを波動砲で粉砕することで破片が散弾となってガミラス本星を壊滅させるのだ。それを狙って波動砲を撃って反撃のチャンスとする。ヒスはヒルデをかばいながら爆発に巻き込まれて死ぬ。花束少女はどこにもいない。廃墟に花束が落ちているだけ」
「夢も希望もねえ」
「そういうヤマトが見たかったねえ」
「それはスターシャは……」
「ガミラスを滅ぼしちゃった残酷さに激怒して、コスモリバースを渡さない」
「なんてヤマト2199だ」
「古代が兄の話でスターシャを引き留めている間に、みんなでコスモリバースを盗んで逃げ出すのさ」
「夢も希望も無いヤマト2199だ」
「そういうヤマト2199なら良かったのに……と思いながらガミラス上空をギムレー艦隊のガミラス艦と戦いながら進撃するヤマトを見ながら思っていた」
「ひ~」
「でも、それをやるとたぶん商業的に失敗する」
「ダメじゃん」
「ちなみに、ガミラスを爆撃するヤマトはひおあきら版のネタだからね」
オマケ2 §
「追憶の航海の特徴は、ギムレーを特に強調しているところだな。ゼーリック並みにギムレーも強調されている。実はギムレーは面白いキャラだ。好き放題やっているように見えつつ、実は凄く達観している部分がある。あまり綺麗事では語らないのだ」
「現実主義者?」
「現実の無情さを知っている男というべきかな」
オマケIII §
「追憶の航海、ゲルガメッシュ離床のカットは無いのだが、実はゼーリック艦離床の良いカットだけ使っている。あれはいいな」
「そういうところだけは良く見ている男だ」
「結局、追憶の航海で見慣れないと思ったカットの多くはTVシリーズにあった。でも、良いカットなのに使い方が下手で印象に残っていなかっただけなのだ」
「間を持たせているだけの平凡なカットは切り捨てて印象を改善しているのが追憶の航海ってことだね」
「もっとも【純血こそ正義】派の人は、切り捨てることで改善できることそのものに異を唱えるのだろうがね」
「ひ~」
オマケ2199 §
「TVシリーズだとどこが好き?」
「9話10話、それから12話の車中かな。あとバラン基地。囚人輸送船」
「9話以外は全部追憶の航海に使われているね」
「9話は特殊なんだ。これ1話で1つの世界を構成している。追憶の航海のような映画には使いにくい。丸々カットされても仕方が無い。でも、それは9話の良さと表裏一体」