「これを機会にこの話題を語ろうか」
「機会? 前々から思っていたこと?」
「その通りだ」
「その趣旨は?」
「テレビ界と出版界は物語の健全性というものに無頓着すぎるので嫌いだという話だ」
「その意味は?」
「物語は始まって終わる。その過程の全てのマイルストーンに意味がある。ところが、テレビ界と出版界は売れる売れないでどんどん作品の長さが伸びたり縮んだりする。これででは物語の健全性が担保できない」
「では健全性を担保できるジャンルとはなに?」
「映画だな」
「理由は?」
「物語は必ず2時間前後で終わる。それ以上、客を暗い部屋に拘束できないからだ。ある程度の伸縮はするが、人気があるから伸ばしましょうとは言えない」
「たとえばダメな例はなに?」
「TVシリーズは終わったけれど、人気があるから劇場版を作ってこれを【真の結末】と呼びましょう」
「物語としては不健全なのだね」
「そうだ。実際には独立した映画がそこにあった方が良い。星巡る方舟の8割は実際には【真の結末】などではなく、独立した映画だ」
「残り20%は?」
「少し混乱している部分があるな」
「では何が問題なの?」
「【真の結末】と宣伝してしまったことだな。ぜんぜん結末じゃないじゃん、実際の内容は。そのセンスは良くないと思う」
「物語の神さまに唾を吐いたわけだね」
「よくあることだけどな」
「よくあるのなら、ヤマトだけ批難できないじゃないか」
「そうだな」
「じゃあさ、むらかわさんのコミックがもし打ち切られたらどう思う?」
「不幸なことだとは思うが、自分としてできることはあまりないな」
「話題にして盛り上げることはできないのかい?」
「正直、コミックが出たら買う、という以上の支援は難しいな」
「なぜ語らないの?」
「言葉が出てこない」
「なぜ言葉が出ないの?」
「この作品から自分が読み取れるのは、【変える】という意志と、ひとまとまりの話が終わるまでゆったり時間が流れる【長い語り口】だけだ。正直、どこを目指しているのかが見えない。だから物語が進行していることは分かるが、それにどのような意味があるのかが見えない。そもそも好きなタイプの話なのか、人に勧められるかも分からない状態だ。意味ありげな描写が積み重ねられているだけで、それがまだ形をなして見えていない。まあ、見えないのは自分がボンクラだからだろうけどな。頭の良い読者はとっくに分かっているのだろうが」
「では、なぜ飛ぶ理由は感想を言えるのだ?」
「飛ぶ理由は、一話完結だし、模型の造形の面白さは物語と違って見たら語れる。動かない模型には時間軸が無いんだよ。物語と違って」
「では飛ぶ理由の物語は健全なのかい?」
「いいや、不健全だ。意識的に不健全な物語を語っている。あれは最初から物語が壊れている世界なんだよ。それはね、物語が壊れている世界への批判そのものなのさ」
「なぜそこまで語れる」
「一話完結だからだ。とりあえず1冊買って読めば話が始まって終わるのだ。次号はまた別の話になる。まあ続いている場合もあるが、それでも1つ1つの話はそれなりに終わっている」
「終わりは重要か」
「そうだ。個人的には、終わりが良いかどうかで、けっこう物語を評価する。ヤマト2199のTVシリーズは終わりが良かったので、途中のぐだぐだは全部水に流した。でも、【真の結末】が結末になっていなかったので、そこは良くなかった。ヤマト2199の後味はけっこう悪くなった」
「終わりを見るために、それ以前の物語を見るわけだね」
「そうだ。だから、人気が出ればいくらでも伸びるタイプの世界は大嫌いだし、終わりに達する前に売れないという理由で終わってしまう世界も大嫌いだ」
「常々そう思っていたわけか」
「だから映画をよく見るようになってしまった。読んでいるコミックは激減中だ。テレビもどんどん減っている」
「ひ~」
「では結論だ」
- みんな方舟を語ろうぜ。ついでに劇場行こうぜ
- みんなむらかわ版コミックを語ろうぜ。ついでに買おうぜ
オマケ §
「問題は作品存続に関する数字の話題が、連続して今ここに出てくるのかだ」
「それはどういう意味だい?」
「今冬のヤマト激変の1つの表出だろう。今のヤマトは取らぬ狸の皮算用を計算した者達が思うほどには儲かっていないはずだが、かといって、ダメだったと捨てる状況にもなく、非常に微妙だ。ここでの舵取り次第で、ヤマトは天国にも地獄にも行ける。君はどっちに行きたい?」
「えっ……。天国?」
「なら語れよ、方舟もむらかわ版コミックも。存在感、期待感を示さずして明るい未来は無いと思え」