「パーフェクトマニュアル2を見ていて気づいたのだが、メダルーザのラフトして松本零士バージョンと板橋克己バージョンが掲載されている」
「それで?」
「実は決定稿が2つ載ってるのだ」
「は?」
「松本零士の決定稿と、板橋克己の決定稿」
「なんでやー」
「これも謎」
「そうか」
「でもね。それほど差が無いというのも事実だし、板橋さんの決定稿はパースが狂い気味で少し不自然」
「ヘボだから?」
「いや、同じ板橋さんのラフはおかしくない。むしろ、決定稿よりもかっこいい」
「どういうことだよ」
「火炎直撃砲の砲口を無理に見せるために、艦首を少しひねった絵になっているが、それは本来の意図では無いだろう」
「無理にそう要望されたのかも知れないってことだね」
「まず松本先生のデザインからバランスをいじるという選択肢でラフは描かれているが最終的に松本先生に近いバランスに落ち着いている。やはり松本先生ありきなんだろう。でも、板橋ラフのメダルーザの方がバランスが取れていて格好いいと思う」
「いずれにしても画面に出てきたメダルーザは残念なのだね」
「そうだな」
もう1つの問題 §
「さて、もう1つの問題だ。松本先生はメダルーザをデザインした。これは事実だろう、しかし、彗星帝国らしくない。彗星帝国は串刺しの円盤が基本なんだ。でも、どこをどう叩いてもメダルーザはそれに該当しない。双胴船なのだ。これは何を意味するのだろうか」
「なに?」
「実は、串刺し円盤形のメカはあまり気に入っていなかったのではないか」
「むしろ、串刺し円盤型からの離脱を試みる1つの提案としてメダルーザがあるというわけだね」
「結局、ヤマト2には、さらば宇宙戦艦ヤマトの負の遺産の精算という目的があったのだろう。そんな気がする。しかし、その目的が上手く機能したとは言いがたい」
「なんで?」
「行きすぎた志の高さは末端まで浸透できないからさ」
「結局、メダルーザは何だったの?」
「蛮族の船だろう。双胴式の。洗練されていない船」
「じゃあ、方舟の蛮族ガトランティスは正解なの?」
「いや、不正解だ。蛮族の船と言ったのはあくまでメダルーザに限った話だし、そもそも蛮族の船と最新鋭の火炎直撃砲はやはり似合わないからだ」
「つまりヤマト2の時点で既に似合ってないわけだね?」
「そうだ。しかも描き方が悪い」
「じゃあ、君の問題意識はどこにあるんだい?」
「方舟はもう自分の中ではスタートレックの引き出しに入ってしまった。それを出してくる気は無い。問題はひたすらヤマト2のメダルーザのデザインが何であり、どこでどうなってあんな結果になったのかだけだ」
「もっと具体的に言えば?」
「あれは土方のアンドロメダの敵になるようなメカじゃない。単に能書きが凄いので、土方を追い詰めただけだ。絵的な説得力では勝てていない。ならば、なぜああいうデザインがあるのか。どう描けば良かったのか。仮にメダルーザを肯定するなら、彗星帝国艦隊はどういうビジュアルであるべきだったのか。テーマは深いぞ」
「まさか」
「そうだ。都市帝国や、超巨大戦艦のデザインすら変化した可能性を想定している。いや、ラフだけはあったのではないかと思う。メダルーザ的なデザインの方法論で描かれた都市帝国や超巨大戦艦が」
「それを踏まえると蛮族ガトランティスも無理が無くなる?」
「それは話がまた別だ。ズォーダーのいる場所は蛮族の宮殿とは言いがたい。洗練されすぎている」
「陰謀が渦巻くのは、それなりに文化が成熟しているからこそってことだね」
「蛮族解釈は、結局、どこかで矛盾を来してしまう」
「それは何を意味するんだい?」
「おそらく、ヤマト2か、さらばの初期段階にそういう解釈のアイデアも誰かが持っていたのだと思うのだが、無理があるので否決されたのだろう。その未練がメダルーザのデザインに残っているのかもしれない」
「それは事実なの?」
「いいや、ただの想像」
「ならば、なぜメダルーザにだけそういうデザインがあるのだと思う?」
「おそらく、みんな疲れた頃だろうし、他に妙案も無かったのだと思う」
「どこがポイント?」
「メダルーザには大戦艦以上、超巨大戦艦以下の説得力のあるデザインを出さねばならない」
「それは難しいね」
「普通の戦艦は描けないので、ああいうぶっとんだデザインにする必要があったのだと思うよ」