「たまたま昭和4年の地図を見ていてハッとした」
「何だよ」
「和田堀変電所に接近するのに横を素通りする送電線がある」
「それおかしいだろ。それ、和田堀変電所に繋がってるはずだよ」
「今はな」
「今は?」
「そうだ。昭和4年と言えば、東電はおろか、日本発送電すら存在しない時代。電力供給は多数の会社がひしめくまさに大電力時代」
「それで?」
「だからさ。別の会社の送電線は変電所を避けて通るわけだ」
「なんてこった!」
「しかし、全ての電力会社が1つになれば、全部接続される」
「電力を融通するには当然だね」
「だが、そう簡単に送電鉄塔の位置は変更できない」
「だから不自然な角度で向きを変える送電線が発生するわけだね」
「そうだ。意外と昭和4年はワンダーランドだぞ」