2015年06月22日
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【ネクスト論】星巡る方舟オリコン1位の謎

Written By: トーノZERO連絡先

 映画の善し悪しの判断は完全にその人の感性に依存するものであり、客観的な評価とは、たいてい評価者の個人的な評価に過ぎない。

 さて、そのような前提を置いてもなお謎はある。

 以下のニュースがそれにあたる。

 『宇宙戦艦ヤマト2199』シリーズの完全新作劇場版Blu-ray Disc(以下BD)『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』[初回限定版](5月27日発売)が初週1万7983枚を売り上げ、6/8付オリコン週間BDランキング総合1位に初登場。同時発売の通常版は7307枚を売り上げて7位に初登場し、同時TOP10入りを果たした。

 DVD・BD通じて同シリーズの過去最高位は、BD『宇宙戦艦ヤマト2199 7』(2013年10月発売)ほかが記録した2位で、首位は初めて。同時発売のDVDは初週7176枚を売り上げ、初登場3位を獲得した。

 この【宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟】という映画は、はっきり言って出来が良くない。どこから切っても出来が良くない。優秀な点を探すのは難しい。

 もちろん、世の中にはこの映画を褒め称えている人もいる。

 映画の評価など人それぞれだからだ。

 だが、だからといって明瞭な弱点をそれこそいくつも指摘できる映画がオリコン1位というのは、かなり意外な結果だ。

 何故だろう?

 弱点を上回る大きな要因が存在すると想定しなければならない。

 その要因とは何だろうか?

 実はネクスト論を進める上で浮上した【コンテンツの枯渇】という問題が、その要因では無いだろうかと気付いた。

 ここでいう【コンテンツの枯渇】とは、コンテンツが単純に少ないことを意味するのではなく、社会的なニーズに沿ったコンテンツが少ないことを意味する。つまり、同じパターンに則った乱造アニメが飽きられているが、かといってそれに取って代わるコンテンツが十分に提供されていない状況を意味する。

 もうちょっと具体的に規定しよう。

 現在のアニメは、男性向け、女性向けと明確に分かれていて、男性向けは美少女をカタログのように配置し、女性向けは美少年をカタログのように配置するスタイルが多い。だが、男ばかり、女ばかりのアニメはバリエーションに乏しく、どうしても描き方がパターン化しやすい。

 だがそのパターンに飽きたとすれば、男性ばかりでも女性ばかりでもない、もっと普通のドラマの構成に嗜好が向かうことになる。だが、このようなタイプのアニメは現在それほど多くはない。一般向け、子供向けを除外し、マニア向けアニメに限ると非常に少ないと言える。

 ところが、この映画に関しては、マニア向けであるにも関わらず、男性だけが多いわけでもないし、女性だけが多いわけでもない。コンテンツのジャンル分けをしていくと、エアポケットのように類似品の少ない場所に位置してしまうのだ。

 そして、実はそこにこそ社会的なニーズが存在したのではないか。

 そもそも、男性向け女性向けに特化するコンテンツ作りはオタク向けビジネスの成功法則だ。その法則が成立していない状況があるとすれば、それは【別の客層】の存在を示唆する。ネクストとは、その【別の客層】に対して与えた仮の名前なのだ。