安部工房は経営がピンチだった。
新しい食品が流行り、伝統的な寿司を作るマシンが売れなくなったからだ。
「第2第3かんぴょう巻き製造マシンはどうした」
「既に流行りは過ぎました」
「こうなったら。第4かんぴょう巻き製造マシンを作るのだ」
「そんなかんぴょう巻きありません」
「我々の手で作るのだ!」
安部工房は総出で寿司を握って新しいかんぴょう巻きの開発に成功した。
「なんと斬新なかんぴょう巻きだ」
第4かんぴょう巻きは世間が大注目した。
だが、製造マシンは全く売れなかった。
「なぜ誰も食べないのですか!」
「だって、斬新なだけで不味いんだもん」
(遠野秋彦・作 ©2015 TOHNO, Akihiko)