2015年12月09日
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三百字小説『アメア・ガリの虹』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 アメア・ガリは七色の後光を背負った虹男だった。しかし、アメア・ガリの背中の後光は太陽の光が無いと輝かないのだ。だから、アメア・ガリが人を集めるのはいつも晴天の昼間。

 しかし、天気予報は外れ、急に雨が降ってきた。

 アメア・ガリはともかく壇上で全力で祈った。雨よ上がれ。雨よ上がれ。

 にわか雨は去り、晴れ間が広がった。

 アメア・ガリは背中の後光が復活したことに満足した。

 聴衆も感動していた。

 「山より大きい虹が出るとは」

 アメア・ガリは慌てて振り返ると本物の虹が山にかかっていた。誰もアメア・ガリの背中の後光など見ていなかった。

(遠野秋彦・作 ©2015 TOHNO, Akihiko)

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