2016年03月03日
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三百字小説『ミズーリ州の水売り』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 ミズーリ州からやって来たその男は商売が下手だった。

 何を売っても買い手が付かない。

 最後には「水でも売ってろよ、ミズーリ出身だけに」と馬鹿にされる始末だった。

 やけくそになって、彼は水を売り始めた。

 「ミシシッピ川の美味しい水だよ」

 なぜかその水はよく売れた。

 しかし、ミシシッピ川からここまでは遠いが、水を運んでいる様子は見えない。

 不思議に思った彼の友達はそっと質問した。

 「水はどうやって運んでいるんだい?」

 「運んでなんかいないよ。そこの川には名前が無いというので、ミシシッピ川と名づけてそこから汲んでいるんだ」

(遠野秋彦・作 ©2016 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦