2016年07月11日
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途中で論旨をすり替える詐欺的トリックの一例として面白い事例を見つけた

Written By: 川俣 晶連絡先

「これのどこがおかしいのだい?」

「冒頭の以下の部分にだけ焦点を絞って説明しよう」

馬しか見たことない人に、これと自動車を両方見せて「どっちが欲しい」と聞いたら、どちらを選ぶだろうか?

理性的な人だったら、自動車が平らな道しか走れないことを一番気にするだろう。

ボストンダイナミクスの四足自走機械は、馬が走れる道ならほとんどそのまま進める。道が舗装されてなかったら、自動車で行ける範囲は本当に限られている。どうみても、四足自走機械の方がずっと実用性が高い。

「道を舗装して、トンネルや橋を作って道を平らにすればいいんですよ」なんて言ったら、「たかが乗り物のためにどうしてそんな手間をかけなきゃいけない?」とあきれてしまうだろう。

私は、今、github を中心に仕事が回る職場で働いている。実際使ってみて、この github というものは非常に便利だと思うのだが、過去の自分にこれを勧めてみたらどういう反応するか想像してみると、これと同じ反応になると思う。

「githubは素晴らしいものなんだろう? どこに問題があるんだい?」

「実は途中で論旨がすり替わっているのだ。典型的な詐欺的なトリックの一例」

「えー」

「このストーリーの登場人物は誰だ?」

「馬しか見たことない人と、機械を上げる人と、これを書いている人の三人かな」

「いいや、違うね」

「どういうこと?」

「道路網のようなインフラ整備には莫大な人と金と時間が必要だ。三人でできるものじゃない」

「つまり、登場人物は三人じゃない?」

「その通り。実はインフラを整備する第四の登場人物が存在するが、そこは隠蔽されている」

「えー」

「ではまとめ直そう。【馬しか見たことない人】の立場に立って考えよう。彼は不整地走行できる機械を与えられればすぐに利用できる。利用価値はゼロではない。ところが、インフラを必要とする機械を与えられてもすぐに使うことはできない。インフラはまだ整備されていないのだ。しかも、彼一人ではとても整備できない」

「人と金と時間が必要なのだね」

「そうだ。それらが集まるという保証は何も無い。誰かが作ってくれる保証も無い」

「つまり、インフラを必要とする機械をもらっても、それが利用可能な状態にならない可能性もあるわけだね?」

「そうだ。不整地走行できる機械は少なくともすぐ使える。不確かな未来に賭ける必要などない」

「じゃあ、この文章で、【馬しか見たことない人】は判断力のない馬鹿扱いされているが、本当は合理的に考えているってこと?」

「そうだろう。そもそもインフラ整備は社会の役割であって、個人に押しつけられるものではない」

「個人と社会の倒錯がトリックの根幹なのだね?」

「そうだ。個人判断と社会の判断は同じではない。が、それを混乱させることでトリックが成立している」

「ではそのトリックを隠蔽しているのは何?」

「【githubは素晴らしい】【素晴らしくて当たり前】【認めないのは頭が硬い阿呆】という認識だろう」

「つまり、インフラ整備されたあとの社会を想像できない馬鹿がgithubを認めないだけで、事実を見れば意見が変わると?」

「そういう論法だが、引き合いに出した事例が悪かったな」

オマケ §

「で、githubって素晴らしいの?」

「さあ。知らない。使ってないので」