2016年12月08日
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三百字小説『オブザー婆』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 その婆さんは、会議のオブザーバーだった。

 いつも、会議に参加しては話を聞いていたが、自分から発言したことはなかった。

 議決権もないし、いつもオブザーバー席に座っているので名札も無いからどこの誰かも分からない。

 僕は疑問に思った。あの人は誰だろう。なぜいつも会議にいるのだろう。

 思い切って事務方の運営者に質問してみた。

 「ああ、それはオブザー婆だよ。仮想現実として投影されているだけで、実体は存在しないんだ」

 「なぜそんな人が」

 「あれは参加者全員の母親のイメージの公約数なんだ。母親に似た女性がいるとみんな緊張して昼寝しないのでね。君も寝てないだろ?」

(遠野秋彦・作 ©2016 TOHNO, Akihiko)

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