2017年06月21日
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太平洋戦争の日本の真の敗因あるいは大日本帝国の真の姿を考えてみる

Written By: 川俣 晶連絡先

「実は最近になって、もしや……というアイデアが頭に浮かんできた」

「それはなんだい?」

「日本が太平洋戦争に負けた理由」

「物量に負けたのではないの?」

「いや。戦前の日本はそれなりの大帝国だ。そうあっさりと物量では負けない。ただの負けた言い訳だよ」

「じゃあ、何が問題なの?」

「非効率性ではないかと」

「非効率性とは?」

「要するに以下のような特徴だ」

  • 成功した前例があると、いくら状況が変化しても踏襲し続ける
  • 無駄の多いやりかたを改善するよりも、リソースを追加して辻褄を合わせる
  • 精神主義による結果強要

「具体的にどういうこと?」

「熟練工を徴兵したり、量産効果が出にくかったり、兵站を軽視しがちだったり、いろいろな特徴として出てくる」

「何か具体例はある?」

「D51は戦争中の軍事輸送のために量産されているが、個体ごとの違いが非常に多くてとても量産効果が出たとは思えない。現場と工場の工夫の積み重ねで稼動していたが、効率が良かったとは思えない。そもそも、蒸気機関車優先の発想そのものが効率が悪い。蒸気機関は効率が悪いんだ」

「日本では石炭が取れるから蒸気機関なのでは?」

「開戦早々南方資源地帯を押さえた大日本帝国だから石油をガバガバ使っても良かったはずだよ」

「つまり非効率ってことだね?」

「そう。大日本帝国の資源を全て効率よく戦争に投入できれば勝てないまでも引き分けぐらいには持ち込めた可能性がある。しかし、ボロ負けした。敗因は身内にある」

「ところで、大日本帝国の真の姿って何の話だい?」

「うん。実はこの話を延長するとちょっと恐い話になる」

「どんな話?」

「非効率と無駄の多い日本的なシステムを温存させるために植民地が必要だった……という大日本帝国解釈のアイデアさ」

「いつからそんな風になったと思う?」

「日露戦争後」

「それはなぜ?」

「日露戦争は日本人からすれば格好の成功体験なんだ。成功した前例があると、いくら状況が変化しても踏襲し続ける体質にとっては、魅力的な題材だ。だから日本の進歩はそこで止まる」

「えー」

「鉄道車両の進化は、蒸気機関車を国内で設計製造できた時点で止まる。軍艦や飛行機の進歩も同じように、何か世界から注目されるような画期的な兵器を開発できた時点で止まる」

「改良は続いていても?」

「改良は続くが画期的な変化は受容されない」

「画期的な変化とは?」

「もっと強力な戦艦とか、もっともっと強力な蒸気機関車というのは改良。それに対して、画期的な変化とは、戦艦より飛行機の方が強いとか。蒸気機関車よりディーゼル機関車の方が維持管理に手間が掛からないとか」

「で、その話は事実なの?」

「ただの思い付きのメモだ。信じるなよ」

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