Written By: 遠野秋彦
鯨の人生は歌そのものだった。
ノーミュージック、ノーライフだった。
ある日、音楽に聴き惚れて泳いでいると船に衝突してしまった。音楽が止まって船は沈み始めた。まさにノーミュージックだった。
「ライフボートを降ろせ!」誰かが叫んだ。
「ありません!」
まさにノーライフだった。
ちなみに鯨の人生には歌しかなかったので、独身だった。
まさにノーワイフだった。
(遠野秋彦・作 ©2017 TOHNO, Akihiko)