「面白いねえ。非常に面白い。こういうものが読めるのは嬉しいことだ」
「どこが面白いの?」
「この話は表面的にテロリストがUQ Holderを追い詰める話に見える。刀太をいたぶるために、キリヱを利用するテロリストに雪姫は手が出ない……という話に見える」
「違うの?」
「違わないが、もう1つ別の物語がある」
「それはなんだい?」
「お兄ちゃん大好きの妹が、他の女にとことん格好良く振る舞って優しい兄貴を見てぶち切れるが、我を失った隙を突かれて雪姫に成敗される話だ」
「えー」
「だから、雪姫が最後に成敗したのはテロリストではない。お兄ちゃん大好きな妹だ。だからこそ、最後に【妹を済まない】と雪姫は謝る」
「物語が二重構造だって事だね」
「本当はそこでもう1つ重大な話があって、これまで矛盾をはらんでいたキリヱの能力の真実の開示というものもあるが、これはキリヱと刀太の愛のきずなを描くためであり、妹を切れさせるための布石なのだ。そういう意味ではそれも第2の物語に回収されていく」
「なるほど。構成が凝っているわけだね」
「見事だよ」