2018年03月15日
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三百字小説『枢機卿猊下の数奇な運命』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 小国に枢機卿猊下が来訪することになった。しかし、ずっと泥臭い土着宗教でやってきた小国には、枢機卿が何かを分かっている者はいなかった。

 「すうききょう……というぐらいですから、きっと桔梗屋の同類でしょう」

 「なに、呉服問屋の桔梗屋か? では桔梗屋が好きなものは何だ。酒か? 金か?」

 「女です」

 到着した枢機卿は驚いた。

 何しろ、どこに行ってもセクシー美女美女美女である。

 しかし、枢機卿たるもの、そう簡単に誘惑に乗ってはいけない。

 「なぜだ。なぜ我々が用意した美女に、枢機卿は手を付けてくれないのだ」

 「きっと男を用意すべきだったのです」

 次の日から、枢機卿の前に美少年がずらりと並んだ。

 「もう帰る」と枢機卿は呟いた。

(遠野秋彦・作 ©2018 TOHNO, Akihiko)

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