「おっそろしいものを見た。これはもの凄く良くできている」
「何が良くできているんだい?」
「まず映画として良くできている。そして、シリーズとしてのおそ松さんとして良くできている。シュールな作品としての完成度も高い。2回はできないネタをぶち込んで、おそ松さんとしては最大級のインパクトの話を構成していて、この映画1本で完全に完結するのだが、実は納得が残るだけでほとんどの問題は何の解決していない」
「シュール?」
「リアリズムで描かれない世界。おかしなものが空に浮かんでいる世界。突然チビ太が巨神兵になる世界。イヤミが出っ歯だけになる世界。モブキャラの顔がへのへのもへじになる世界」
「それは常識的な世界ではないね」
「リアルに寄せることが品質の向上だと思っていたらできない表現だよ」
「他に何か?」
「実はこれ二重虚構なんだよ。ストーリーそのものは虚構の世界で進行するがそれはそれとして、イヤミ、デカパン、もしかしたらダヨーンも自分がキャラクターに過ぎないという自覚がある。イヤミは自分を主人公と言うが、これは自分がキャラクターだという自覚があると言うこと。デカパンはギャグアニメは便利だと言うが、これも同じ」
「二重虚構か」
「それから、問題の高橋さんの正体はトト子の隣にいるあの人かと思ったら違った。いろいろと意外性が多い。あと始まってすぐの展開が、全く別作品みたいだけど、最後にちゃんとそこに返ってくるのも上手かった」
「他に何か気になったことは?」
「オープニングのショートコント、複数バージョンあるみたいだけど、何種類あるのだろうね」
余談 §
「久々に劇場で映画を見たが、見たかった映画は複数あった。でも独特の嗅覚を発揮してこれを選んで良かった。予想の数倍も納得できた。最後は泣けたし」
「予想通り良かったのではなく予想を超えたわけだね」
「そう。基本的にみんな知っているおそ松さんの要素を少しパワーアップした程度のパーツを並べながら全体として別の世界に行けた。これは非常に良くできている。観客を迷わせないで、満足感を与えられる。本当に上手い人が作っている証拠だ」
「プロを偽装した素人の学芸会とは違うわけだね」