2019年05月04日
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【伝統詐欺】という用語について

Written By: 川俣 晶連絡先

「単なるメモだ。【伝統詐欺】という用語について」

「伝統詐欺とはなんだい?」

「うん。普通に行ったら通らない無理のある主張を通したい場合に、相手を思考停止させるために【これは伝統だ】と言う詐欺行為を意味する」

「さすがに、すぐばれるのではないか?」

「実は意外とばれない。大多数の人は歴史など詳細に知らないから、昔からあったような雰囲気の話をされるとコロッと信じ込んでしまうことが多い」

「間違いは間違いとして指摘すればいいじゃないか」

「しかし、良いことは良いのだから、嘘でも構わないと言い出す支持者も出てきて根絶できない。あるいは、教祖の敵対者のネガキャンと受け取る人もいる」

「でも、詐欺なんだね?」

「うん。根拠が薄弱かそもそもない。それどころか、本人の主張に整合性がなく、自己矛盾していることも多い」

「それなのに、なぜ信じる人が出てくるの?」

「大多数の人は結果だけ聞くからさ。話の整合性なんて意識しない」

「要点はどこにあるんだ?」

「伝統すなわち【昔から続いてきたこと】をやめてはならないという主張は、しばしば合理的な判断に優先される。だから、合理的に考えれば通らない主張を押し通すためのツールとでは大変に有効だ。だから何となく昔からあるっぽい話を押し通すためにけっこう多用される」

「【伝統】を過度に強調する人は【伝統詐欺師】の疑いがあるってことだね」

「そうだな。本当に歴史を学んだ人なら時代ごとにどんどん文化が変化していることを知っている。だからどの時代のフォーカスするかで文化のありようも変化する。たった一つの【昔ながらの伝統】なるものが存在すると主張した時点で、それは歴史ではなく詐欺である疑いが出てくる」

「ずっとそうだったという根拠を示し得ないわけだね」

「それどころか根拠が存在しないことも多いぞ」

「そんなものをなぜ信じる人がたくさん出てくるんだよ」

「典拠をチェックしてオリジナルにあたるという方法論を訓練されていない人が大多数だからね」

「相手を信じるなら、相手を疑うようなことをしては失礼に当たるのではないか?」

「逆だよ。相手のためを思うならきちんとチェックを行うべきだ。単なる言い間違いを事実として広めたら、相手の顔を潰すことになる」