宇宙拳法の使い手の僕は、道場を開いて無敵の看板を掲げた。
そこで、最初の客が来た。
「オークションで落札したいものがあるんです。でも、いくら無敵の拳法でも必ず競り勝つのは無理ですよね」
「任せなさい! 宇宙拳法に不可能はない!」
僕は競り合いに勝利し、鮮やかに落札を決めた。
「まさか拳法を使って相手を殴ったりしてないでしょうね?」
「ちゃんとルールを守って勝ちましたよ。殴るのはルール違反です」
「で、落札価格はいくらですか?」
僕は相場の十倍の値段を言った。「三日以内にここに振り込んでね」
僕は客に殴られた。
殴るのはルール違反じゃないか。
(遠野秋彦・作 ©2019 TOHNO, Akihiko)