2019年07月26日
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訂正・初の国産パソコンは何か・PC-8001ではないらしい

Written By: 川俣 晶連絡先

「そもそもパソコンとは何かという定義からして曖昧であるが、ここではアラン・ケイの話は除外して、【はじめて自らパーソナルコンピューターを名乗った国産機は何か】という観点で話を進めよう」

「君がこれまで考えていた初の国産パソコンとはなんだい?」

「PC-8001だ」

「その理由は?」

「箱に書かれたPersonal Computerの文字が凄く異質に感じられたからだ。当時はみんな【マイコン】と呼んでいたからね」

「ふむふむ。製品がPersonal Computerを自称したわけだね」

「でもね。MZ-80Kの本体や箱にもパーソナルコンピューターと書かれていたという指摘をもらって改めて調べて仰天した」

「何に驚いたんだい?」

「以下は月刊I/O 1979年2月号の九十九の広告だ」

九十九

「パーソナルコンピューターとはっきり書かれているね」

「この時代PC-8001はまだなく、COMPO BS/80が売られている。それどころか、ワンボードマイコン製品がまだ大量に売られている時代だ。COMPO BS/80はコンポと書かれている。その他はだいだい何も書かれていないかマイコンだ。この号の中でパーソナルコンピューターと書かれて宣伝されているのはざっと見た限りApple-IIとPET-2001とMZ-80Kだけ。ただし、MZ-80Kもミズデンの宣伝ではマイコンと明言されてしまっている」

「つまりなんだい?」

「Apple-IIもPET-2001もアメリカ製だから、明らかにパーソナルコンピューターを名乗ったのはPC-8001よりもMZ-80Kの方が先。ただし、MZ-80Kは初期段階ではマイコン博士ジーエイティであり、MZのMは明らかにマイコンのMだから、最初にアナウンスされたMZ-80Kはまだパーソナルコンピューターではなくマイコンだったと思われる。それからネットには【ホビーコンピュータ】と書かれていたという情報もあるので、パーソナルコンピューターではなかったと思われる。製品化するに当たって、最終的にパーソナルコンピューターという呼び名に変化していったものと思う」

「でもマイコンと呼ばれることもあったのだね?」

「マイコンとパーソナルコンピューターの表記は混在したものと思う。たとえば、http://retropc.net/ohishi/museum/mz80k.htmのページの真ん中あたりに掲載された【MZ-80Kが製品として発売された時のパンフレット】だと表は【本格派マイコン】なのに裏は【パーソナルコンピューター】と書かれている」

「切り換え過渡期の混乱?」

「用語の混乱はかなりあったものと思う。だから、ミズデンはマイコンと言い切り、九十九はパーソナルコンピューターと言い切ったのだと思う」

「では、ここから【パーソナルコンピューター】という用語は普及したのかな?」

「PC-8001発売時でもまだ【マイコン】の全盛期だから普及しなかったと思うよ」

「それでもMZ-80Kを初の国産マイコンだと思うの?」

「少なくとも、こちらが典拠をチェックした限りでは、自ら【我こそはパーソナルコンピューターなり】と声を上げた初の国産機ということになる」

「しょせん、パソコンは定義のない【自称】ってことだね」

2019/08/20追記 §

「その後の研究の成果はこの本にまとめた」

「はじめてパーソナルコンピューターを自称した国産機ってどれ?」

「読めば分かる」

「ケチ。教えてよ。ベーシックマスターだろ?」

「はずれだ。たぶんみんな知らない機種だから読まないと分からないぞ」