2019年08月01日
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三百字小説『好みのエコノミー』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 オレは秘書に命じた。「今年はもう予算が残り少ないんだ。エコノミークラスで席を予約してくれ」

 「ボス。エコノミーにもいろいろな席があります」

 「どれでもいいよ」

 「そうは行きません。どの席にもそれぞれ違った個性があります。この航空会社は好みに合わせていろいろな座席の中から選択できるのが売りです」

 「じゃあ、通路側で頼む」

 「色はどうしますか?」

 「何色が選べるの?」

 「赤青黄色ですね。あ、緑もできます」

 「じゃ赤で」

 「承知しました。背もたれの高さはどうしましょう」

 そのまま選択に1時間は掛かった。

 「では以上で送信します」

 「頼む」

 「選択に時間を掛けすぎて既に満席になっていました」

 予約は失敗した。

(遠野秋彦・作 ©2019 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦