庭のあずまやにはマヤちゃんが住んでいた。
「あんなぼろ屋によく住めるね。そもそも外から中が丸見えじゃないか。着替えるときはどうするんだよ」
するとマヤちゃんは答えた。
「私透明人間だから平気よ。ほら」
マヤちゃんはすっと見えなくなった。
凄いぞ。
本物の透明人間だ。
僕は母屋に走って兄に発見を伝えた。
すると兄は言った。
「バカ。マヤはあのあずまやで十年前に首を釣って死んだメイドの名前だ」
「でも、確かにマヤちゃんは透明になったぞ。透明人間じゃないのか?」
「幽霊なら消えることぐらい朝飯前」
なんとうらめしい。
マヤちゃんはまやかしだった。
(遠野秋彦・作 ©2019 TOHNO, Akihiko)