2019年08月15日
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三百字小説『あずまやのマヤちゃん』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 庭のあずまやにはマヤちゃんが住んでいた。

 「あんなぼろ屋によく住めるね。そもそも外から中が丸見えじゃないか。着替えるときはどうするんだよ」

 するとマヤちゃんは答えた。

 「私透明人間だから平気よ。ほら」

 マヤちゃんはすっと見えなくなった。

 凄いぞ。

 本物の透明人間だ。

 僕は母屋に走って兄に発見を伝えた。

 すると兄は言った。

 「バカ。マヤはあのあずまやで十年前に首を釣って死んだメイドの名前だ」

 「でも、確かにマヤちゃんは透明になったぞ。透明人間じゃないのか?」

 「幽霊なら消えることぐらい朝飯前」

 なんとうらめしい。

 マヤちゃんはまやかしだった。

(遠野秋彦・作 ©2019 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦